「怪獣映画の王道と邪道」グエムル 漢江の怪物 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣映画の王道と邪道
今作で出現する怪獣は魚と恐竜が合体したようなグロテスクフォルム。
ウルトラ怪獣では、帰ってきたウルトラマン『怪獣使いと少年』に登場するムルチに近い。
名前は不明。
下水道を住処とし、空腹時に上陸しては、主食の人間を襲い、丸呑みにして食する。
オープニングで川で大観衆の注目を散々集めておきながら、唐突に現れ、大暴れする場面は、ハチャメチャで面白かった。
怪獣はファーストインパクトが命。
意表を突く奇襲戦法は合格点である。
片っ端から喰い放題で殺しまくり、平和なソウル市を恐怖のドン底に突き落とす破壊力は、素晴らしいの一言に尽きる。
この修羅場をキッカケに《怪獣VS韓国軍》による電光石火の大激戦の幕開けかと思いきや、怪獣の山場はそこのみ。
物語の大半が、対応処理に困り、ウイルス感染するからと生存者達を隔離したり、猛毒ガスを散布しようとする韓国政府の無能ぶりや、保存食扱いで生け捕りにされた娘を救出しようとするソン・ガンホ一家の奮闘がメインになっている。
主役であるはずの怪獣が、すぐに脇役に回っているので、ゴジラ・ガメラetc.で育った正統派怪獣世代には物足りない展開だ。
せっかくあんな派手に登場してきたのに、得体の知れない怪獣の恐怖感や存在感が徐々に薄くなってしまっている。
これでは日本に出現した場合、科学特捜隊のアラシ隊員がスパイダーショット1発で倒してしまいそうなぐらい弱そうではないか。
怪獣が頑張らんでどうする!?
そう思うと、ソン・ガンホが途端に毒蝮三太夫師匠に見えて仕方なかった。
せやから韓国版ゴジラというよりも韓国版トレマーズの方が、テイストは似ているかもしれない。
テキサスの田舎町で砂漠の中から、人間を引きずり込む怪獣が現れるB級パニックで、若き日のケビン・ベーコン率いる退治グループの掛け合いが面白かった。
今作でも主人公一家をはじめ、ドコか抜けている人々のドタバタがコミカルに描かれている。
オモロいにはオモロいけど、吉本新喜劇を凌ぐコッテコテギャグ連続に、そちらの方が怪獣の方より個性が強くなり、明らかに目立っていた。
結論:
怪獣よ、人間より影薄くなってどうする!?
では、最後に短歌を一首
『怪獣は 目立ってナンボの 世界やろ 先ずは暴れろ 地味でどうする!?』
by全竜