劇場公開日 2006年9月2日

グエムル 漢江の怪物 : 映画評論・批評

2006年8月22日更新

2006年9月2日より有楽町スバル座ほか全国東宝系にてロードショー

韓国の天才監督が世の中の真実を炙り出した怪作

怪獣映画の固定観念に縛られていれば、本作には肩透かしを喰う。猟奇殺人ミステリーの枠を超えた傑作「殺人の追憶」を生んだポン・ジュノは、またもやジャンルを突き抜け、国家や人間の姿を笑い飛ばしながら、世の中の真実を炙り出す怪作を仕上げてしまった。

怪獣や怪物は往々にして、時代や社会の歪みによる邪念や憎悪が込められた恐怖のイコンである。本作のモチーフは実際に起きた在韓米軍によるホルムアルデヒド垂れ流し事件。異形の姿となった水中生物は突如として陸に上がり、暴れまくる。「千と千尋の神隠し」の暴走するカオナシがそうであったように、本作の怪物は抑圧されキレる世代の象徴でもあるのだろう。通常活躍するはずの政府や軍隊は、娘をさらわれた家族に救いの手を差し伸べることなく、むしろ妨害し孤立させるよう追い込んでいく。軍事政権下での民主化という時代の闇を、思春期に通り抜けてきた作家の情念に満ちた批判精神が鋭い。

シネフィルでもある監督自身は今村昌平作品を志向し、底辺で生きる人間に光を当て続ける。民主化やアメリカナイズが進んでも、変わりようのない土俗性。あらゆる情勢に翻弄される弱者の叫びが可笑しくも切ない。

清水節

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