劇場公開日 2006年9月2日

「怪獣映画の皮をかぶった社会派映画?ホラー映画の皮をかぶったコメディ映画?それともオタマジャクシの皮をかぶった在韓米軍映画?」グエムル 漢江の怪物 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0怪獣映画の皮をかぶった社会派映画?ホラー映画の皮をかぶったコメディ映画?それともオタマジャクシの皮をかぶった在韓米軍映画?

2020年3月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 こんなの見たことない。怪獣の造形はエイリアン、カオナシ、オタマジャクシかウナギ犬と、不気味な面構え。しかも動きが無茶苦茶速い!これは、邦画のゴジラシリーズに慣れ親しんだ者がハリウッド版『GODZILLA』を観た時と同じくらいショッキングな動きでした。もしかするとこの動きの差は、日韓それぞれの国技の差、すなわち相撲とテコンドーのスピード感の差がそのまま表れたモノかもしれない。

 人を喰い散らし、派手に暴れまわる怪獣は獰猛、残酷でありながら、本来ならば生まれることのなかった自らの存在を嘆き悲しんでいるかのように、必要以上の人間を喰うことなく川に逃げ込んでしまう。因果関係ははっきりしないが、駐韓米軍が不法投棄した化学薬品に原因があったかのように描かれ、初代ゴジラが反核を訴えていたように環境問題をテーマにしているのかと思えます。また深く考えると、米軍の存在そのものを否定した作品なのかもしれません。

 コミカルな演出の中にも売店一家の末娘を中心とした家族愛が大切にされ、一方、軍や警察が怪獣を退治することよりウィルス感染を恐れて関った一般人を隔離することに全力を注ぐといったお粗末さをアピールしていました。さすがは『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督。前作ではシリアルキラーの恐怖を描きながら、ずさんな警察の捜査を皮肉っていた内容でしたが、今回は怪獣の恐怖を描きながら、軍、警察、政府、役人などの権力側をすべて風刺しています。

 このポン・ジュノ色に欠かせない独特の雰囲気はもちろん個性派俳優の支えあってのもの。親バカぶりを存分に発揮し、笑わせてくれる父親はソン・ガンホ。怪獣に向かってアーチェリーで攻撃する彼の妹にはペ・ドゥナ。彼女は勇ましくカッコいいのに、その無鉄砲さがお茶目で可愛いのです。壁に叩きつけられたシーンでは思わず心の中で悲鳴をあげてしまったほどです。

 ラストはちょっと悲しい気分になりましたが、これもポン・ジュノ流なのでしょう。嘆き悲しむよりも自分の行動の達成感に満足し、明るい未来を夢見るソン・ガンホの姿にはホッとさせられました。エンドロール後もお楽しみに・・・

〈2006年9月映画館にて〉

kossy
kossyさんのコメント
2020年3月14日

bionさん、毎度です!
いや、実は見直ししてないので自分でも気になってしょうがないのです(汗)14年前の記憶はやはり遠い・・・

kossy
bionさんのコメント
2020年3月14日

少年とのエピソード以外で、エンドロールの後って何かありました?

bion