「映画として完璧な映画」グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち pullusさんの映画レビュー(感想・評価)
映画として完璧な映画
これほどまで幸福に満ちる作品があるだろうか。
レビューにもある通り、パズルのピースがはまっていく感じ。
ラストには完璧な美しい画ができあがる。
演技、台詞、音楽、映像、何一つ妥協しない傑作だ。
恋に落ちたとき、好きな理由を説明できないのと同じで、この映画を見終わったとき、どうしようもなく切ない気持ちになった。
マット・デイモンの演技は、観客をその世界へと引きずりこむ。常人離れの天才児は暗い過去を持ち、心を閉ざしている主人公ウィル。ふさぎこむのではなく、人生をゲームのように軽んじて、真剣に人と向き合わないのだ。
そんなウィルのよき理解者として現れるのが、ロビン・ウィリアムス演じるショーン。ショーンは台詞をひとつひとつ大切に話す。それがウィルの心に響き、観客の心を打つのだ。今まで見てきた映画の中で、最もたくさんの良い台詞が詰まっていると思う。チャッキーを演じたベン・アフレックとデイモンが執筆をした良質な脚本だ。
その脚本にも引けをとらないのが「ミルク」を手がけた監督、ガス・ヴァン・サント。美しい映像と、音楽、そして語らない演出がまさにうってつけだ。大切なことは語るけれど、全ては語らないという手法が、まさに映画らしい演出。最も感動した場面は、本作のラストだ。彼女の家に向かって走っていく一台の車。それをカメラが追いながら、静かにエンドロールが流れる。その間もなお、車は走り続け、アメリカの壮大な景色を映し出す。
言葉にならない美しい風景に、主人公・ウィルの姿が重なる。旅立っていくのだな、とそこで改めて実感するのだ。
チャッキーが最後に迎えに行くシーンもいい。彼の寂しげな微笑みが、この映画の全てを語っている。
今夏、マット・デイモンとガス・ヴァン・サントの奇跡のタッグが再びよみがえる。8月公開の「プロミスト・ランド」は、同じくマット・デイモンが脚本に参加している。