「心を閉ざし 港に停泊したままの船のようになっていた 才能豊かな若者が碇を上げて人生という大海原に出航してゆくまでの物語」グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
心を閉ざし 港に停泊したままの船のようになっていた 才能豊かな若者が碇を上げて人生という大海原に出航してゆくまでの物語
とてもいい映画です。私はこれを生涯のお気に入りリストの中に入れています。複数回 鑑賞していますが、いつも同じ箇所で目が潤んできます(と、書きましたが、鑑賞を重ねるたびに目の潤む箇所がじわじわと増えてきているようにも感じています)。リバイバル上映されるということでしたので、いそいそと映画館に出かけて観てきました。
たぶん、私はこの映画でマット•デイモンとベン•アフレックの名前を知ったように思います。おそらく監督のガス•ヴァン•サントの名も。この映画は1997年作品で、あのジェームズ•キャメロン監督の大作『タイタニック』と同じ年で、アカデミー賞を始めとする賞レースでバッティングしてしまって獲れる範囲がかなり狭まったにもかかわらず、それをかいくぐってアカデミー賞で脚本賞(なんと、マット•デイモンとベン•アフレックの共同脚本!)、助演男優賞(ロビン•ウィリアムズ)の2部門でオスカーを獲っています。個人的な好みで恐縮ですが、私は『タイタニック』よりこの『グッド•ウィル•ハンティング 旅立ち』のほうがはるかに好きです。『タイタニック』も複数回 鑑賞してそれなりに感動してきましたが、なんだかジェームズ•キャメロンが主人公ふたりのラブ•ストーリーやタイタニック号の最期を見せ過ぎてしまっているような気がして…… それに比べてこちらのほうには、文学作品でいう「行間を読ませる」というか、鑑賞者に想像力を働かせる余地を残しておく優しさみたいなものがあって、それが余韻のある心地よい鑑賞後感に繋がっているのかなとも思っています。
さて、この物語のキモは、共同脚本を書いたふたり、マット•デイモンが演じる 両親を失い里親に虐待されて育ったが、天才的な頭脳を持つ ボストンのスラム出身のウィルと彼の仕事仲間であり遊び仲間でもある ベン•アフレック演じるチャッキーの友情物語です。また、もうひとつのキモとしては、心を閉ざして偽悪的な言動を繰り返すウィルと、限られたカウンセリングの時間の中で、そんな彼に寄り添いながら彼の心を解きほぐしてゆく 大学で心理学を教えながら心理カウンセラーをしているショーン(演: ロビン•ウィリアムズ)との心の交流の物語です。冒頭に書いた私の目が潤む箇所というのは、ウィル+チャッキーのシーンか、ウィル+ショーンのシーンになります。
まあでも鑑賞を重ねるうちに、もうひとつの登場人物同士の関係が気になるようになってきました。それはフィールズ賞受賞者でMITで数学を教えているランボー教授(演: ステラン•スカルスガルド)とショーンの関係です。このふたりは学生時代からの友人のようなのですが、何やら過去に確執めいたものがあったような雰囲気が漂っています。ウィルの数学の才能を発見したランボー教授は彼をなんとか更生させようと何人かのカウンセラーにカウンセリングをお願いするのですが、誰もうまくいきません。結局、ランボーは最後の切り札みたいな感じでショーンにお願いし、ショーンのほうは自分のところに来る前に何人かに依頼していたことを指摘しつつも引き受けます。ふたりはウィルに対する方針について対立したりもしますが、結局は和解します。最初に観たころはやはりウィルとチャッキーの友情物語に涙していたのですが(もちろん今でもそうなんですけど)、私が年をとってきたこともあって、ウィルの出現によって新たなステージに入ったように感じられる彼らの関係を見るのも興味深いところではあります。
いずれにせよ、生まれてこのかた、ボストンを離れたことがなかったウィルは(それが書物で得た知識ばかりで自分の言葉で語っていないという、ショーンに指摘された点にも繋がっているのですが)、友人や師を残して恋人スカイラー(演: ミニー•ドライバー)のいるカリフォルニアに旅立ってゆきます。チャッキーを始めとする仲のよかった3人組にプレゼントされたオンボロの車を駆って。さて、エンドロールからの余韻に浸りながら、ウィルのその後の人生でも想像してみますか。

