「名優ロビン・ウィリアムズの名演の渋さとマット・デーモンの教養小説のような脚本の巧みさ」グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
名優ロビン・ウィリアムズの名演の渋さとマット・デーモンの教養小説のような脚本の巧みさ
俳優のマット・デーモンとベン・アフレックの共同脚本がアカデミー賞受賞の話題作。脚本家・演出家以外の主要キャストが脚本を兼ねる非常に稀な事例だが、どちらも充実した成果を上げていて、その才能の豊かさに感心してしまう。この若い才能を支える主演のロビン・ウィリアムズの渋い名演がまた素晴らしい。これまでの「ガープの世界」「いまを生きる」「レナードの朝」での自身の演技の集大成のような演技を見せて、心に傷を負った心理学者の内面を見事に表現している。アカデミー賞の助演男優賞受賞に議論の余地はないと云っていい。
物語は、天才的頭脳を持つアルバイト清掃員ウィル・ハンティングが、大学の廊下に出された数学の超難問を軽々と解き、高名な数学科教授の期待と羨望の星として輝く未来を獲得しようとするのが発端になる。だが、これをそのまま描いて、どこにでもある凡庸なストーリーにはしていない。頭脳明晰に反して虚勢を張る精神的に脆いウィルの改善をカウンセリングする、大学講師の心理学者ショーン・マグワイヤとのやり取りが物語を深める。妻を亡くした喪失感から抜け出せないショーンの方も変化し再生していくところが凄い。お互いの心の傷を認め合って生まれるカウンセリングの本質を見せてくれる。気まぐれでいて大人を冷静に観察するウィルの言動も、細かく丁寧に表現されているからだ。心理学に精通した脚本家デーモンの頭の良さが窺われる。それは、このウィリアムズ演じる心理学者を主人公にしたドラマがもう一作品作れるのではと思わせるくらいだ。
ショーンの治療を受け、ウィルは社会的成功より自分を偽らない新たな道を選択し、一度別れた恋人のもとへ向かう。素直な自分を見付けた青年は、良い恋愛を経験する。それが自立の一歩になるウィルの旅たちを、地に足の着いた現実的な論説で爽やかに描いた、教養小説のような映画の秀作。
2000年 4月22日