劇場公開日 2004年5月1日

ゴッド・ディーバ : インタビュー

2004年4月23日更新

フランス製コミック=バンド・デシネの巨匠、エンキ・ビラルがコミックで描いた近未来世界が「ブレードランナー」以降のSF映画に大きな影響を与えたのはご存知の通り。異文化が入り乱れた雑食性の街も、空中を行くタクシーも、みなビラルの近未来像で描かれたもの。そのビラルの最新監督作「ゴッド・ディーバ」は、彼のコミックの代表作ニコポル3部作の「不死者のカーニバル」「罠の女」が下敷き。つまり、ビラル自身がCG映像によって3次元化した彼の近未来世界像を体験させてくれる作品なのだ。この日本公開のために来日したエンキ・ビラルと、映画のヒロイン、ジルを演じるリンダ・アルディにこの映画の舞台裏を語ってもらった。(取材・文:編集部)

Part1:エンキ・ビラル、「色」を語る

エンキ・ビラル監督
エンキ・ビラル監督

「ゴッド・ディーバ」の映像は実写映像を加工して作られたもの。ゆえに、すべての造形と色彩にエンキ・ビラルの美意識が貫かれている。その製作過程のひとつひとつにビラル自身が手を加えているのだ。

たとえば、建物の造形。まずビラルがスケッチを描き、それを元にグラフィック・デザイナーやリサーチャー、建築家などがその世界を膨らませていく。そうやって作られた3Dの下書きの中からビラルが気に入ったものを選ぶ。その画像をプリントアウトしたものに、ビラル自身が鉛筆で修正し、細かい部分を描き入れていく。それを3D化する。こうしてビラルの建築物が完成する。これらが集合してビラルの街が創られる。

では色彩はどうか。エンキ・ビラルといえばなにより「色」だ。エンキ・ブルーと名付けたい独特の「青」は映画でも同じ。こちらも実写映像を加工する作業だが、その過程での監督の指示をたずねるとこんな答が返ってきた。

「色は単独で存在するものじゃない。色を決めるということは、同時に、照明や光を決めることでもある。色は、そこにあるものの質感でも変わっていくんだ」

上空にピラミッドが浮かぶニューヨーク
上空にピラミッドが浮かぶニューヨーク

手順としては、まずその場面の図面が作られる。それにビラルが色と光線、質感を指示する。その指示によって作られたものをビラルが見て、さらに指示して手直ししていく。そうやって100%望み通りの色を実現していったという。

映画の色彩は、彼のコミックに比べると柔らかい印象があるのだが、その点についてはビラルはこう考えている。

「コミックと映画は別ものだと考えているから、コミックをそのまま映画にコピーしようとは思っていないんだ。でもホテルの部屋なんかはコミック版にすごく近いと思うけどね。もし映画版が柔らかい印象を与えたとしたら、それは『空』のせいじゃないかな。コミックの空はいろんな建造物や飛行物で混雑してるけど、映画版の空はピラミッド以外は何もなくて、現実の空に近いものになってるからね」

人間以外にも様々な種族が暮らす
人間以外にも様々な種族が暮らす

また、登場人物たちの造形ももちろん彼のデザインによるものだ。人間という設定の登場人物の表現方法は4種類あり、人間の俳優が演じるキャラ/人間に近い造形のリアルなCGキャラ/デフォルメされたCGキャラ/カブリモノが登場する。CG製キャラにリアル系と非リアル系の2種類があるのは意図的なものだ。非リアル系のキャラは、技術や製作費の不足ゆえの不本意キャラではなく、あえて違う種類の生物として創られたのだ。

「というのも、この世界にはエイリアン、ミュータント、人間、モンスター、アンドロイドといったいろんなタイプの存在が混在しているんだからね。近未来社会はそんなふうになってると思うんだ」

インタビュー2 ~Part2:エンキ・ビラル、「ブレードランナー」を語る
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