GOAL! : 映画評論・批評
2006年5月23日更新
2006年5月27日よりサロンパス・ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にてロードショー
「定石」を踏まえ、愛すべき作品に
目の肥えたサッカーファンなら、主人公サンティアゴのプレイに、「(利き足が右足なはずなのに)ここで左足でフリーキックを蹴るんかい」とか、「ドリブルしているとき周りをもっと見んかい」とか、ツッコミを入れたくなる描写も少しある。しかし、だ。絵に描いたようなサッカー青年の成功物語で、思いっきりベタな展開なのに、たまらなく愛してしまうのだ。なぜって、ぼくらが大好きなスポ根ものの「定石」をことごとく踏まえているからである。家族の愛、恋人の出現が天才の挫折を救うのだから。
これまでサッカーをモチーフとして描く映画は多かったが、熱い「ピッチでの戦い」を物語の中心にすえたサッカー映画はめずらしい。FIFA公認映画で、ジェラード(リバプール)やランパード&ジョー・コール(チェルシー)の本物のプレイを堪能できるお楽しみもある(ベッカム、ジダンら“銀河系軍団”がチラッと顔を出すのは続編への予告か!?)。
が、何よりもプレミアリーグの巨大なスタジアムの熱狂と興奮が、こちらの血を沸騰させるのだ。入団先として、(アラン・シアラーで有名な)古豪ニューカッスルを選んだのも正解だ。そこには、選手たちととも生きる根深いフットボール文化がある。ピッチの内外をつつみこむ「フィーバー」をこれほど伝えてくれる映画は、ない。
(サトウムツオ)