プラダを着た悪魔 : 映画評論・批評
2006年11月7日更新
2006年11月18日より日比谷スカラ座ほか全国東宝系にてロードショー
最大の勝因はメリル・ストリープによる強烈なキャラクター
“悪魔”なカリスマ編集長を、メリル・ストリープがモノマネしたくなるほど強烈なキャラクターに仕立て上げた。それが、本作の最大の勝因。新米アシスタントに無理難題を言いつける横暴編集長というイメージから想像する怒声とは裏腹に、メリルは眉の動きや用件だけを伝える最小限の言葉で、沈黙の威圧感を醸し出す。しかも、その奥に自分が見込んだ新米アシスタントへの期待も滲ませる陰影の深さは、天下の大女優ならでは。ヒット作には強烈なキャラクターが付き物だけれど、このカリスマ編集長ぶりも思わずマネしたくなるインパクトだ。
もちろん、モードのカリスマのもとでファッションセンス・ゼロのヒロインが洗練されていく成長物語は、ベタな展開でも痛快だし、「セックス・アンド・ザ・シティ」のパトリシア・フィールドが手がけたハイブランドのスタイリングを見ているだけで、女なら満足度120%。なにより、これは明日から使える“お仕事ムービー”。ヒロインと編集長の関係は、仕事に大切なのは何を求められているかを見極めることだという事実を浮かびあがらせるのだ。多少突っ込みどころはあるものの、これで恋愛パート担当の男優陣の男前度がもう少し高かったら、エンタテイメントとしても完璧だったのに?!
(杉谷伸子)