落語家の業のレビュー・感想・評価
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前代未聞、タブーなき全身落語家。
大須演芸場の強制差し止め直前まで高座に上がり続け、執行官を唖然とさせたこと。元弟子から訴えられても、それすら飄々とギャグに変えてしまう人間力。かえすがえすも圧倒される。
江頭2:50が借金取りに追いかけられた際、大川総裁から「その状況を楽しめ」と言われ、借金取りから逃げるために穴を掘ったというエピソードを思い出した。
心理療法で言えばナラティブ・セラピーに近いのだろうが、これは昨今の鬱屈した日本社会にこそ必要な発想だと思う。
競馬を当てた場面では、思わず拍手してしまった。天晴れである。
なお、訴訟を起こした元弟子については、彼女から「師匠を取るか、自分を取るか」と迫られた構図だったことは明白だろう。
また本日は満席で、立ち見も10人以上はいたように思う。これほど素晴らしい作品が、東京では1館のみ、しかも1日1回の上映にとどまっているのは、あまりにももったいない。
辛い人生を送っている人を含め、より多くの人に観てほしい映画だ。
ウマ年の年賀状😎
快楽亭ブラック師匠
なんと、二代目。
初代がいたことはあとあと知ることに。
このドキュメンタリー映画は
ブラック師匠のどんな状況もネタにしてしまおうとする強欲な芸人の性(サガ)を紹介したものである。
落語協会から脱退した立川流で、なおかつ談志に破門され、フリーとなり、軒並み普通の演芸場は出禁。しかし、タダの破天荒な破滅型の芸人ではない。
2004年には横浜にぎわい座で高座を何回か鑑賞。
とにかく、声がデカい。
古典も抜群にうまい。
そうしたら、
2005年10月にはTBSラジオ収録中に急性大動脈解離発症。
天罰?
助かってよかったものの、
アシスタントだった小林麻耶に膝枕で介抱してもらっただの、麻耶ちゃんのお尻のような白い桃の缶詰をお見舞いにもらう約束がまだ果たされていないなど、厨二並みのくすぐり。
転んでもただでは起きぬ。
大病のお陰で、日活ロマンポルノ女優との間の第一子のももと17年ぶりの再会と相成り、孫の顔も見れた。
2006年に発行された放送禁止落語大全の2巻は我が家の家宝である。
その後、お江戸日本橋亭にも何回か通って、手渡し販売の禁演アングラ落語CDを何枚か購入。
なんといってもイメクラ五人廻しは名作中の名作。
2014年の大須演芸場の席亭の家賃滞納による差し押さえ強制執行がトリの演目中に行われ、前もって、執行官が入ってきたら、待ってましたと拍手で迎えようと客と申し合わせるところなんかは悪ノリ根性全開である。撮影は鈴々舎馬るこ。
2020年には最後の弟子ブラ坊が元カノのアソコがガバ〇バだったと洩らしたのを高座のネタにしたことから、元カノから名誉棄損罪で訴えられ、裁判で30万の慰謝料支払いが確定した。
しかし、2021年有馬記念でなけなしの30万を単賞エフフォーリア(2.1倍)につぎ込んで、翌日見事的中させたというかなり負けず嫌いな一面も。
来年のウマ年の年賀状にするつもりで、トークショーのあとに師とのツーショットを撮ってもらった😎
ありがとう。
Tシャツも買いましたよ。
これも「業」なのか!?
タイトルにある「業」。キャッチコピーのひとつ「コンプライアンスの超越者」。快楽亭ブラックとは、どんな悪党なんだ!?と思っていたが、その実態は…「無邪気な表現者」だった。
恐らく、本人が「無邪気」な分、周りの人々に色々な「皺寄せ」が押し寄せるのではないか。映画中に登場した元弟子も、最後にトークで登場した佐平次師匠も吉幸師匠も「皺寄せ」を間近で味わったからこそ、「距離が出来て」よかったと仰るのではないか。
ある意味、ここまで「無邪気」であること自体が「業」といえるのではないか。同じ建物の別のフロアで聞いたブラック師匠による古典落語は、シンプルながら工夫があり、面白かった。今度は、「無邪気」さ、丸出しのドぎつい落語も聞いてみたい。
僕たちにマジな話なんてないんだよ。すべてシャレなんだよ。すべてを笑い飛ばすのが、粋。
公開初日。弟子に訴えられた裁判に、チンドン屋を引き連れて「被告福田でございます」と"お練り"よろしく登場して幕が開く、破天荒落語家快楽亭ブラック半生記。そもそもブラック師匠は、自らを「あいのこ」と自嘲(ハーフは優性遺伝、あいのこは劣勢遺伝とも)し、放送禁止用語をバンバン発しても、被差別者が差別を語る図式に、抗議する側はその矛先を鈍らせてしまう。コンプラ真っ盛りの世の中に稀有な、昭和を思いっきり引きずった存在でもある。何人ものクズ芸人を取り上げた某TVドキュメンタリ番組でさえ企画段階で却下(あまりのゲスっぷりにスポンサーを説得する自信がないのだろう)されるほどの人物である。芸人の了見を地で行くドキュメンタリ映画が面白くないはずはない。(隣人や身内にはいて欲しくはないが)
ヤマ場はいくつかある。一時期拠点としていた大須演芸場が、家賃滞納、税金未納で行政側から強制執行を受けることになった際、これもネタにし執行官たちを笑いの対象にしてしまう茶化しっぷりは見事。大勢の観客に「待ってました」と拍手で迎えられスマホで激写される仏頂面の執行官の可笑しいことったらない。「強制執行を見世物にしてしまう席亭の強欲」とブラック師匠は言うが、あんたもな!とツッコみたくなる気分だった。
弟子から訴えられ、原告側(弟子とその彼女)から請求された謝罪配信も不真面目だと責められる始末。(まあそもそもブラック師匠に弟子入りしておいて人権もクソもないんだが)
さらに請求された慰謝料も、31万5千円まるまる競馬にツッコむイカレぶり。しかも単勝で勝つ強運。←ここで客席が湧き拍手が起こった。ちなみに、2.1倍だったらしいので、結果ほぼ手元に残らないというきれいなオチがつく。
終演後、トーク。ご本人と、サンキュータツオさん。明日はこの下のユーロライブで渋谷らくごの出番というブラック師匠、先日倒れたと聞いていたがいたって元気に毒を巻き散らかしていました。あのまま昇天していればそれが番外編として最終章を飾って、いい人生の締めくくりになっただろうに。(こう書いても、あの人の場合、全然誹謗中傷には当たらないのがいい)
なおこの映画で、寄席界隈の芸人で言えば、鈴々舎馬るこ師匠、坂本頼光先生、居嶋一平先生、夫婦漫才ジキジキのお二方などがいいお仕事をしていますのでご注目。
長年の垢を落とした様なさっぱりした気分で映画館を後に
テレビは勿論の事、一般の寄席でも見る事の出来ない落語家、快楽亭ブラックの半生を追ったドキュメンタリーです。彼の嘗ての高座の映像を見ると、皇室ネタのバレ噺(エロネタ)を堂々と語っており、こりゃあアンダーグラウンドで生きて行くしかないわぁと納得できます。でも、彼の素晴らしいのは、それが反権力とかいう大層な思想に基づくのではなく、単なる受け狙いの為せる業だという点です。でも、ギャンブルと借金にまみれ社会の落伍者に見える彼の生き方こそ、師匠の立川談志のいう「落語は業の肯定」を生きる姿なのかもしれません。
彼の遣る事為す事は横紙破りなのに痛快で、ドキュメンタリーでこれほど笑ったのは初めてです。こんな無茶苦茶な人間が身内に居たら迷惑この上ないでしょうが、「全てをシャレのめす」と言う覚悟がカッコいいのです。そして本作中一番の見せ場で、客席が一気に盛り上がり「うぉ~」と上映中に歓声と拍手が上がったなんてのは初めての経験でした。
更に、上映後の舞台挨拶では、本編を上回るパッションにすっかり遣られてしまいました。全てがお行儀よく刈り揃えられて行く現代にあって、長年の垢を落とした様なさっぱりした気分で映画館を後にしたのでした。
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