「筋肉への憧憬」ボディビルダー　La Stradaさんの映画レビュー（感想・評価）

　地方都市で暮らす男が、貧しさと孤独故に内から沸き起こる怒りの暴走を制御できず数々の失敗を繰り返しながらも、ボディビルの世界で名を為そうとする物語です。

　速く走りたい、高く跳びたい、重い物を持ち上げたい、その為に筋力を鍛えるというのは分かるのですが、ひたすら見せる為に筋肉を磨くというのは理解出来る様でいてどこか違和感を覚えます。「理解できる」と言うのは僕の中にもあるだろう「マッチョ信仰」の様なものに引きずられての事でしょうし、「違和感」というのは自分の筋肉を鏡に映してウットリする「ナルチシズム」によるのでしょう。本作は、ボディビルの世界の持つその両面性の世界にジワジワと踏み入って行きます。現実のボディビルダーの方々が皆同じ動機でその世界に入った訳ではなく、同じ心理を抱いている訳ではないでしょうが、肉体と精神には何か繋がりがあるのではとやはり考えてしまいます。

　そういえば、陸上部員としてウェイトトレーニングに日々励んでいた学生時代には、風呂屋の鏡に大胸筋を映してポーズを取っていたなぁと言う事を思い出しました。あれは一体何だったのかなぁ。