劇場公開日 2025年12月19日

「ボディビル界の内幕暴露も衝撃的な外見と内面の葛藤劇」ボディビルダー 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 ボディビル界の内幕暴露も衝撃的な外見と内面の葛藤劇

2025年12月21日
PCから投稿

悲しい

怖い

ステロイドの助けを借りて筋肉を増強させ、見栄えのいいボディメイクによって脚光を浴びることを夢見ているボディビルダーのキリアン。原題の"マガジン・ドリームズ"とはボディビル雑誌の表紙を飾ることを意味する。それはその世界で頂点を目指す挑戦者たちにとってはスターの証なのだ。

しかし、キリアンは育った家庭環境の影響もあり、心の中に複雑な問題を抱えていた。それが、周囲に溶け込めず、湧き上がる怒りを暴力に繋げてしまう遠因でもあるのだ。感情を自らコントロールできない、いわゆるアンガー・マネジメントを扱った映画は過去にもあった。だが、本作が一層シュールなのは、そこにボディビル界独特の評価基準や、ボディビルダーたちの密かな性的嗜好を描いた点にある。アメリカ社会に根強いマッチョ崇拝主義が物語の根底にあるような気もする。キリアンには幸福な出口が一切見当たらないのだ。

ここまで人間の内面と外見の乖離が招く悲劇をあからさまに描いた作品はそう多くないと思う。ジョナサン・メイジャーズの筋肉に怒りと悲哀を投影させたかのような熱演も含めて、決して後味は良くないが観る価値は大いにある問題作だ。

清藤秀人
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