「アンガーマネジメントは大事よね」ボディビルダー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
アンガーマネジメントは大事よね
■ 作品情報
世界一のボディビルダーを目指す孤独な男の純粋な夢が狂気へと変わっていく様を描いたヒューマンドラマ。監督・脚本はイライジャ・バイナム。主要キャストは、ジョナサン・メジャース、ヘイリー・ベネット、マイク・オハーン、テイラー・ペイジ。製作国はアメリカ。
■ ストーリー
アメリカの片田舎で病気の祖父を介護しながら孤独な日々を送る青年、キリアン・マドックス。低収入で友人も恋人もいない彼は、雑誌の表紙を飾るような一流ボディビルダーになるという揺るぎない夢を抱いている。キリアンはその夢を叶えるため、過酷なトレーニングと食事制限に打ち込む。しかし、肉体は悲鳴を上げ、社会の不条理と孤立が彼の精神を蝕んでいく。彼の純粋な夢は、ある出来事をきっかけに徐々に狂気へと変貌し始める。 憧れの存在であるブラッド・ヴァンダーホーンを目標に、成功への道を突き進もうとするキリアンだが、その孤独ゆえの「空気の読めなさ」が彼を痛ましい状況に追い込み、夢と現実の境界線は曖昧になっていく。 彼のたどる道は、観る者に息苦しさを感じさせる展開となる。
■ 感想
予告編を観た時から、物語の大筋は理解でき、悲劇的な展開は予想していました。そこにどんな結末が待っているのか、その一点に興味をそそられ、劇場に足を運びました。
物語は概ね予想どおりの展開で、ストイックに自分を追い込みながらも、思うような結果が出ず、徐々に心が壊れていくキリアンの姿が、切なく悲しく伝わってきます。追い詰められた彼がこれからどんな行動を取るのか、不穏な空気を漂わせながらサスペンス仕立てで物語を紡いでいく展開は悪くないと感じます。
しかし、これだけキリアンを取り巻く状況が悪化しても、彼の心情に深く寄り添うことができないのが残念です。というのも、大会結果が悪いのは審査員のせい、友人や彼女ができないのは周囲のせい、仕事を失ったのは上司のせい、大切な大会当日に暴行に遭ったのは相手のせい…と、彼の行動原理は常に他責思考に基づいているように見えるからです。この点が、どうしても共感を抱かせず、一歩引いて観てしまう要因となってしまいます。
むしろ、ここまで共感を抱かせない人物像であるならば、観客を置いてけぼりにするような、もっとヒリヒリする暴走ぶりを描いてくれても良かったのに、とも思ってしまいます。それだけに、ラストの展開には「そこに落ちるんかい!」と少しツッコミたくなってしまいます。
というわけで、決してつまらないわけではありませんが、全体的にはおもしろみに欠ける印象の作品です。
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