ダ・ヴィンチ・コード : 映画評論・批評
2006年5月23日更新
2006年5月20日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
原作の弱点がストレートに反映
「ダ・ヴィンチ・コード」という小説は、聖杯伝説の真相を語るうんちく話はすこぶる面白いが、サスペンスとしては構成も詰めもかなり甘い。うんちくを語るために事件が起こり、キャラクターが配されているという感じさえある。その弱点を補強して、殺人事件に巻き込まれた象徴学者のラングドン(トム・ハンクス)とソフィー(オドレイ・ドトゥ)の運命にハラハラ・ドキドキさせ、カトリック教会が2000年に渡って隠蔽してきたミステリーの謎解きでワクワクさせてくれる映画を期待したが、さしものロン・ハワードも、このベストセラーを自由に再構築することまでは出来なかったようだ。
原作の弱点がストレートに反映された映画になってしまった。一番肝心な、聖杯とシオン修道会の秘密に対しては、最後まで興味をひっぱり続け、バチカンの陰謀をのぞき見る面白さは十分に出たが、陰謀を仕掛けた方も、それに巻き込まれた主役たちも、キャラクターが描きこまれていない。故に誰にも感情移入できないし、事件の行方や決着も心配にならないのだ。唯一の例外はティービングを演じたイアン・マッケランで、彼の存在はすべての弱点を帳消しにすると言いたいほど魅力がある。
(森山京子)