「グイ・ルンメイの多彩な魅力を愛でる一本」ドライブ・クレイジー タイペイ・ミッション 高森郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
グイ・ルンメイの多彩な魅力を愛でる一本
グイ・ルンメイが初登場シーンで「ティファニーで朝食を」のオープニングを再現して早々に楽しませてくれる。アジアの女優でオードリー・ヘプバーンを真似してさまになるのは彼女か深津絵里くらいだろう(個人の感想)。劇伴で「ムーン・リバー」が流れるベタさがリュック・ベッソン製作らしくていい。エレガントなレディが真っ赤なフェラーリを駆って台北の街を爆走、という流れも上々のつかみだ。
2014年の「薄氷の殺人」でのファム・ファタールが高評価されたこともあってか、2019年の「鵞鳥湖の夜」、そして今年9月の「Dear Stranger ディア・ストレンジャー」と暗めなキャラクターが続いたグイ・ルンメイ。だが今作で彼女が演じるジョーイは、スーパーカーもバギー車も乗りこなす天才ドライバー、麻薬密売で財を成したクワン(サン・カン)と愛のない結婚をした妻、一人息子に愛情を注ぐ母親、昔の恋人ジョン(ルーク・エバンス)と思いがけず再会して心を乱される一人の女といった具合にいくつもの顔、多彩な魅力で観客を楽しませてくれる。
市街や山道でのカーアクション、ホテルでの銃撃戦などは、リュック・ベッソンが関わった映画らしく派手で刺激的。とはいえ、逃げるクワンが運転する車に、路地を走って追いついたジョンが横からダイブするなど、あり得そうもない大雑把な描写も散見され、それもまたベッソンらしいといえばらしいのかも。細かいことは気にせず、グイ・ルンメイを愛で活劇を気軽に鑑賞するのがいいだろう。
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