ホーリー・カウのレビュー・感想・評価
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選びようのない田舎の現実、でもうっすら希望はある
人生は厳しい。コスパ、ダイパ優先だけでは、そう簡単にはいかない。ましてズルしては、上手く行きっこない。苦労、実体験、失敗、学びを通して成長していく、泥くさいけど確実に。
そこまでやってもコンテストで勝つのは難しい、というか参加すら出来ない。でも、それでいいんじゃないか。冒頭の自堕落な姿からは想像できないくらい真剣な表情になった。
それに信頼できる仲間がいるのはやはり大きい。喧嘩をしても修復可能なかけがえない存在。
カウガール マリ=リーズの明るく逞しいキャラがいい。二人の行く末に希望を感じた。今までと同じ田舎にいたとしても。
懸命に生きる諦念
この映画の肝は、ここに登場する若者達の人生における選択肢の少なさだと思う。これは、都会に生まれた者や、地方に生まれてそこから出たことがない者にはかなり気付きにくい感覚だ。それが証拠にここに登場する若者達には閉塞感がない。気付いてないからだ。この社会を割り切って屈託なく過ごしている。それは、いくらかの大人達にもそう言うところが見える。そう言う者達は、縦のつながりでもしがらみや運命を難なく受け入れて、屈託なく関係性を保っていくしかない。
主人公は父親を亡くして、幼い妹を養っていかなければいけないが、恨み言を言うわけでもないし、妹を切り捨てることもしない。恋心を抱きながら簡単に女性を裏切るが、これも屈託なく謝罪して済まそうとする。友人にも同じような事を。それぞれにぶつかり合ったり許し合ったりもするのだが、それは何もヒューマニズムではない。彼等がこの社会で選択肢がないからだ。だから、全てを受け入れていく。いかざるを得ないとも言えるけど。その人間模様が繊細にそして軽快に描かれていて、それが何とも愛おしい!人と人は争い続けることはできないし、慰め合い続けることもできない。受け入れて、ある意味添い遂げるしかないのである。
裏切られた女性が最後主人公に、満面の笑顔であるサインを送る。諦念の映画かもしれないけど、やっぱりその笑顔はホッとさせてくれる。都会の閉塞感を描くケン・ローチ作品とはまた違う澄んだ希望を感じさせてくれるのだ。
すごく楽しみにしてたのに
父を亡くした事をきっかけに、工房を継いでチーズ職人になる話かと思って、期待して観に行ってみたら、盗んだ牛乳で作る話でガッカリ。
あらすじにも予告編にもそんなの無かったよ...。
幼い妹と2人で生きていかなきゃいけないのは分かる。でも人の好意や善意を仇で返すようなことばかり。
やること全てがダメすぎて、トトンヌが最後まで好きになれなかった。
盗んだ生乳で走り出す
農村のほのぼのした物語かと思いきや、若者たちががっついたキスを交わすポスターのビジュアルは伊達じゃなかった。
確かに舞台は酪農地帯なのだが、テーマは10代のヤンキー同士の抗争、女の子の取り合い、車とバイクの暴走、そして無謀な夢へのチャレンジなのだった。
主人公のトトンヌは、チーズ工場で働く父を手伝う一方、仲間とダンスパーティやガールハントの日々。ところが父は不慮の事故で死去、小学生ぐらいの妹の面倒を見ながら自活することを強いられる。
父のあとを継ぐように工場で働き始めるが、「朝の4時から集乳」を言い渡されるなど労働は過酷だ。トトンヌは童顔で中学生ぐらいにも見えるが、ゴミ収集車みたいなトラックを運転し、チーズの原料にする牛乳をホースで集めて回る。
この工場、悪いことに女の子を取り合う敵グループ一家の経営で、あっという間に喧嘩騒動を起こして仕事はクビになる。
ここでトトンヌは自宅でチーズを自作して活路を開こうとするのだ。チーズ工場で働くヤンキー兄弟の妹は、ひとりで牧場を運営し牛を育てている。この娘と恋仲になり、すきを見て生乳をちょろまかしてチーズの鍋を茹でる。
チーズを固めるには酵素が必要なことを知らなかったり、出来上がったチーズの袋を鍋から引き上げる技術が足りなかったり、悪戦苦闘ぶりは微笑ましいが、そもそも敵から盗んだ生乳で生計を立てるのは無理がありすぎる。
フランスの田舎の風景や、自然の恵みを生かした生活は美しい。一方で学校をドロップアウトした若者の生活ぶりはB・スプリングスティーンの歌に描かれるような、行き場のない工場労働者の絶望だ。兄と妹ふたりの生活は「火垂るの墓」並みに心細くて切ない。
ただ若者たちはスマホで女の子を誘い、牛舎の牧草の陰でアバンチュールにふけるというようにしたたかだ。もともとは自然を相手にした自営業である。ワンチャン、苦境からの大逆転もあるかもしれない。
こんなふうに本作は普通は同居しない世界が平気で同居し、深い絶望と躍動感を同時に味わわせる貴重な映画だった。
なんてこった
チーズ工事主だった父親が突然亡くなり
小さな妹と生活の為に働かざ得なくなった
トトンヌ。
コンテチーズの賞金欲しさに仲間と伝統チーズを
作りに挑戦するが、失敗の連続。
そりゃ素人だしね。
野心と心ざしは買うけど、かなりのクズ。
牛乳を盗み続けるのは駄目だろう。
ただ、周りのマリーやジャンは良い奴
すぎる。マリーは聖母かと思ったよ。
妹クレアのユーモアセンスは抜群。
はっきり淡々と言うし。
地元の演技未経験者の方々が信じられない
位に良かった。だから、リアリティーが
出たのかもしれない。
そこを引き出す監督の手腕も凄い。
最後の転がるカーレースは面白そう。
そこに髪を染めて観に行く兄弟。
良いなぁ、あの感じ。
どうにかなるさ、何とかなる考えの
のどかな精神。微笑ましい。
農村風景とユーモアがある地方の若者の
青春映画。
爽快な余韻が残る昨品でした。
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