「反抗期の痛みと、乳製品への回帰と」ホーリー・カウ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
反抗期の痛みと、乳製品への回帰と
フランスで100万人動員だそうですね!
この数、けっこう若者たちが映画館へ行ったのではないかなぁ。そんな気がします。
とっても素朴で、ありふれたフランスジュラ県の酪農家の話。
地味じゃないですか。ストーリーはのんびりしているし、きっと若者好みでは無くて、寝落ちの危険度も有ります(笑)
でも「100万人」には理由がありそうです。
トピックは恐らくふたつです、「満たされない時代だからこそのソウルフードへの回帰」と「若者たちの足掻きのリアル」。このマッチングですね。
チーズ、ワイン、味噌。
どれも加工食品としては人類最古のものです。元々は思いがけず自然発生的に出来上がってしまった食べものの部類で、
どれも発酵食品なんですよね。
そして発酵食品は、その土地の土壌や風土、そして住む人と共にあった「酵母」が物を言わせます。テロワールです。家庭の味です。
土地土地のチーズは、村の特産でありますし、チーズを製造する人たちがそれぞれの家庭に持っている酵母が醸してくれる「チーズ=それは家族」のようなもの。
でも家庭に反発して苦しむ盛りの=反抗期の不良少年にとっては、その”糠味噌くささ“が何よりも拒絶したい、たまらなくイヤな存在なのでね(笑)
映画はそこが本当にうまく描けている。
親や家業に縛られることからなんとか脱出したいあの年代にとっては「土着のチーズ」と「自分」は究極にバッティングするトピックだと僕は感じるのです。そこが面白い。
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僕もチーズは好きで、高校時代には昼食には堅パンとチーズの塊を持って部室で過ごしてました。
「ハイジみたいだ!」と部員から驚かれましたね。
柔らかいチーズには柔らかいワイン。
強いチーズには強いワイン。人の心持ちや成長に合わせてチーズもワインも選べるのです。
【Holy Cow! 】
マジかよ!なんてこったい!
緩急つけながら兄ちゃんが妹を思いやるその気持ちが絶品でした。悪ガキ仲間たちの「友だち思いの連帯」にも優しさが溢れます。
◆失敗作の初めてのコンテチーズを牛舎にそっと返してくる沁みるシーン。
◆「父親の死」と「仔牛の゙誕生」。
安直なハッピーエンドではなかったからこそ、この作品は味わいが深くなったのだと思います。
◆エンディングでの“彼女の大サービス”がまた はっちゃけてて、愛がこもってて、とてもいいじゃないですか!(笑)
土や藁の匂いを嗅ぎながらのセックスや牛のお産の光景には、永島敏行と“牛のような”石田えりさんとの「遠雷」なんかを思い出しましたね。
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東座は今夜は僕のためだけに貸し切り上映。義理の弟さんが映写機の担当。
館主の合木こずえさんはなぜか一歩後ろに下がって、どうしたことか照れた笑顔です。お客さん一人だって全然いいじゃないですか♪
HolyCow!いい味出してました。
「合木さん、帰りにスーパーで何かチーズを見繕ってきますね」。
+ネット通販で、
本作のドラマの舞台ブルゴーニュ、ジュラ県産の①コンテチーズ。そしてまさしく同地のワイン⇒サヴァニャン種の黄色がかった白ワイン。すぐに発注しました。映画にもブドウ畑が映っていたのを見逃しません。届くのが楽しみです。
白ワインとチーズの組み合わせは初めて。胸が躍りますよ。
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ではでは、
元ワイン造醸所勤務の きりんでした

