劇場公開日 2026年4月

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「傑作という言葉で片付けたくない傑作」LOST LAND ロストランド スライムさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 傑作という言葉で片付けたくない傑作

2025年10月31日
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鑑賞方法:試写会

東京国際映画祭のジャパンプレミアにて鑑賞

引き込まれるとか感動したとか、そんな安易な表現をしてはいけないくらい切実なミャンマーの現実を突きつけられているのに、フィクションとしてのドラマの出来がとても良いので、見ていて引き込まれてしまうし、感動して涙してしまう。

ドキュメンタリーとフィクションの境界線を横断しながら撮影されたこの映画は、圧倒的なリアリティを持つ映画として完成されている。観客はミャンマーの現実をフィクション越しに直視し、登場人物たちの行く末を祈ってしまう。しかし映画はその祈りに対して、俯瞰的な態度でドラマ(=現地のコミュニティへの取材などを経て作られた緻密なシナリオ)を展開していく。その態度がより、観客とミャンマーの現実との距離を近づけているように思う。

もちろん、現地のことを海の向こうから見ているだけの人々(私も含めて)が、この映画を見たからと言ってミャンマー、そしてロヒンギャの事を分かったような態度には決してなってはいけない。
だからこそ、監督らスタッフ達が現地の人々と交流しながら作ったこの映画を、鑑賞者は真正面から受け止め、考えることを続けなければいけない。こんなにも現実を突きつけてくる劇映画を、私はほかに知らない。

スライム