劇場公開日 2025年12月19日

「双子でも身代わりは無理だよね」楓 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 双子でも身代わりは無理だよね

2025年12月21日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

■ 作品情報
スピッツの名曲「楓」を原案としたラブストーリー。監督: 行定勲。主要キャスト: 福士蒼汰、福原遥、宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗。脚本: 髙橋泉

■ ストーリー
ニュージーランドで事故により命を落とした須永恵。恵の恋人である木下亜子は、その深い悲しみと混乱の中で、恵の双子の兄である須永涼を恵本人だと誤解してしまう。真実を打ち明けられない涼は、亜子を気遣い、弟のふりをして共に過ごす二重生活を始める。彼は弟として振る舞いながらも、しだいに亜子に強く惹かれていく。しかし、亜子もまた涼には言えない秘密を抱えており、二人の間には隠された想いと葛藤が生まれる。彼らの複雑な関係は、真実を知る幼なじみの梶野茂、涼のアシスタントである遠藤日和、亜子の相談相手である辻雄介といった周囲の人物たちの想いをも巻き込みながら展開する。物語は、大切な人を失った喪失感と、秘められた愛が織りなす切ない運命を描く。

■ 感想
予告編から既に物語の切なさを感じ取り、どのような結末が待っているのかという期待感を胸に本作を鑑賞してきました。

冒頭から、兄・涼が事故で亡くなった弟・恵の身代わりとして恋人の亜子と生活していることが明かされているため、観客は自然と涼の心情に寄り添いながら物語を見守ることになります。仲睦まじく暮らす二人の姿が、いつかこの幸せが終わってしまうであろうという予感と重なり、かえって胸を締め付けられます。二人の仮初めの幸福が、優しい嘘の上に成り立っていること、そして当人たちもそれに気づかないふりをしていることが、俳優陣の繊細な演技からひしひしと伝わってきます。

ただ、そんな演技と冒頭のわかりやすい伏線のおかげで物語のオチは中盤には見えてしまいます。本作の最も重要な仕掛けであっただけに、ここはもう少し目立たないように仕込んでおいてほしかったです。

しかし、それでもなお作品に深く没入できたのは、登場人物全員が互いを「慮る」純粋な愛情に満ちた展開が心地よかったからだと感じます。「いくら双子でも身代わりなんて無理だろう」という観客の疑問に対しても、納得がいくような展開と、それを支える丁寧な描写があったのが好印象です。特に、涼が深夜まで左手で字を書く練習をしていたシーンは、弟への、そして亜子への彼の深い愛情と葛藤が凝縮されており、最も心を揺さぶられます。

ラストも、不必要にその後を描かず、余韻を残す形で締めくくられていたのが非常によかったです。鑑賞後には温かく、どこか清々しい気持ちになれる後味のよい作品です。

おじゃる
おつろくさんのコメント
2025年12月24日

共感ありがとうございます!

本作は本当に「切ない」のオンパレードでした。涼の顔を恵と認識しちゃう恵のポンコツスマホが切ないし、既読が付いたことで特大の誤解をしちゃう亜子が切ないし、高校の時に恵の影武者をした涼が亜子の誤解に付き合っちゃうのが切ないし、涼に振り向いてもらえない日和が切ないし、泣くつもりじゃなくてもあれだけトラップを仕掛けられたら泣いちゃいますよね。その割に後味スッキリだったのには激しく同意します。

おつろく
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