クラッシュ(2005)のレビュー・感想・評価
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無知の知
この作品はネットの評価や人伝で「感動する!」と聞いていたけれど、そうじゃなかった。様々な人種の人々の衝突(クラッシュ)によって紡がれる、線と線が絡み合う物語。群像劇で特定の主人公がいないからこそハッピーエンドもあれば後味の悪い結末もありました。
特に印象に残ったのが差別主義の先輩警官に嫌悪感を抱く若手警官のお話。差別はいけないという意識を持ちながらも、今まで衝突したことがなかったが故に彼は本質的に差別対象となる人々の事を理解できていなかった。つまり、彼の考えは「黒人は○○や××な理由で差別されるけど差別はいけないから俺はそんなことしない!」といった具合。本当に黒人の人々が○○や××なのかを知らないのにそうだと決めつけた上で「それでも俺は差別なんかしない!」といった自己満足のようなものだったのです。その考え方が、差別対象者に対する無知が、黒人青年を誤って射殺してしまうあの事件に繋がってしまう。様々な人々が差別をしていたけど、1番恐ろしい差別者は彼だったのかもしれません。
透明マント
多種多様な人種が入り乱れるアメリカ・ロサンゼルスに住む人々の生活・生きざまを映す群像劇。
前半、来る人来る人がヘイトを撒き散らして、他人を傷つける様子が続く。
中盤、一つの交通事故をターニングポイントとして、少しずつあたり方が変わっていく。
透明マントのエピソードには思わず涙が出た。
EDのStereophonicsの曲も、本編の味が出ていて好き。
人生は黒と白だけでは解決できないのだよ。
映画評価:50点
まず監督の演出が素敵でした。
普通とは違った感性を持っているのか?演出の仕方が普通の監督とは違ってましたね。
普通ならばバラバラの破片を組み合わせて一つの完成形にするものなんですが、バラバラの破片をバラバラのまま見せてくるんですね。
一つ間違えたら、何を伝えたいのかも不明になってしまう難しい演出ですので、それを上手くまとめた技術は素晴らしかったです。
作品では主に誰もが抱く差別的思想と、出会い方によって変わる関係性みたいなものだと感じました。
極端に言うと、今この文章を読んでいる貴方の仲の良い友人と、違った出会い方をしていたら犬猿の仲になっているのかもしれない。
どういう思想の人間が、どういう状況で、どういう人と出会うかで変わってくる未来、それをロサンゼルスの一遍で表現しているのだと思います。
地味だから詰まらなく感じた人もいるとは思いますが、それもまた状況が変わったら面白く感じる時がくるかもしれませんね。
【2014,9.21鑑賞】
他者を理解すること、他者に理解されること
全体的にもっとすべての出来事が最後は一本に結び付くのかと予想していたけど、思っていたほどではなかった。サンドラ・ブロックの部分は果たして必要だったのか...。
さまざまな人種で構成されているアメリカという国。映画では人種の違いをあえて浮き立たせるように描いていたけれど、異なる立場の人々が、差異を超えて分かり合うことの難しさが伝わってくる。まさに「クラッシュ」。でもぶつかることなしには他者との相互理解は始まらない。衝突がすべて良いものだとも思わない。どうすればいいのか・・・。自分の気持ちに素直になることが、ひとつのカギなのではないでしょうか。難しいけどね
人生はクラッシュ
人は皆悩みを持っている。いじめ、差別、コンプレックスは様々な理由から生まれる。金持ちも貧乏人も、白人も黒人も、みんな何かを抱えて生きている。たから、意見がぶつかったり、理不尽なことは起きるのは避けられない。億万長者だって想像もつかない悩みがあるはずだ、きっと。生きている限りいろいろな衝突がある。その中で自分を再確認し夢や目標に向かって努力する。努力しないで文句や僻みを言っているだけでは何も変わらない。そして相手の気持も理解できれば素晴らしい。
ロサンゼルスで人種差別の問題から起きた様々なストーリーが繋がって最後にはじんわり切ない気持ちになる。娘が5歳になったら妖精からもらった透明マントを譲るストーリーが素敵だった。
上手くいかない人生ってもどかしい
いろいろな人達が主人公です。そして少しずつ繋がってます。
この映画の大きなテーマは差別です。白人、黒人、アジア系に!・・・私自身日本しか住んでなくて人種差別とか考えたとないですがあちらはあぁなのかと思ったらいろいろ考えてしまいました。一概に差別がダメとも言えない。もどしく感じる映画です。でも見入ってしまいました。
人種の多様性が見せる混迷のドラマ。しかし、感動の一作。
2006年アカデミー作品賞受賞作。下馬評では、「ブロークバック・マウンテン」が受賞と言う感じだったんですが、大どんでん返し。もっとも、監督賞は「ブロークバック・マウンテン」のアン・リーだったんですが。この結果は、「ブロークバック・マウンテン」は同性愛を描いていたので嫌われたが、無視できない作品だったので、監督賞を与えたと言うような都市伝説になってもいます。
白人、黒人、ヒスパニック、アジア系・・・。様々な人種が入り乱れて生活し、それぞれ依存し、対立している。アメリカの縮図そのものを描いています。また、家族同士も愛し合い、誤解し、すれ違う。様々な局面に人生の無常観を強く感じますね。物語上、特に大きな事件はおきません。淡々と、様々な人種が入り乱れて関連しているある一日が描かれています。それでも、人種間の摩擦を下とした様々な問題が引き起こります。これを見ると、1992年に起きたロス暴動は、起きて当然かなぁと言う気にもなります。
ドン・チードルが良いです。彼の哀しい表情は何とも言えないですね。『ホテル・ルワンダ』でも良かったですが、この作品でもいいです。サンドラ・ブロックは、ああ言う演技しか出来ないのかなぁ・・・。引き合いに出して悪いかもしれないですが、ドン・チードルの様な、表情で見せる演技って出来ないんですかね。
何れにしてもいい映画です。お薦めです。
負の感情の招く負の連鎖と浄化
総合:80点
ストーリー: 80
キャスト: 80
演出: 80
ビジュアル: 70
音楽: 75
何ともぎすぎすしていて殺伐とした嫌な雰囲気と緊張感である。誰もが自分の不幸を呪い他人を責めたてる。そして他人がまた不幸になっていく。自分の持つ劣等感、怒り、憎しみ、本当はそれらを外に発しているのは自分なのだが、そんな邪悪な感情が反射して自分自身にも振りかかってきて、そんな負の連鎖が延々と続く。負の感情は負の結果を呼ぶ。
この映画の大きな主題の一つは、負の感情の大きな一つである差別だろう。そして差別をしている登場人物たちの表情のなんと醜いことか。差別から解放されて相手をただの人として捉えることが出来たとき、彼らの実にすっきりとした表情の変化に、こちらも実に心がすっきりとする。幸せな結末とは言い難いし、感動するというのでもない。でも映画で続いた負の感情に汚された心が、見終わったときに綺麗に浄化された気分になる。
家族と我が身の不幸を社会への怒りにして差別主義者になったライアン警官役のマット・ディロンをはじめとして、登場人物たちの演技も良い。知っている俳優ばかりではないのだが、それぞれの感情の描き方が短い登場時間の中でうまく表現されていたと思う。調べてみると、ヒスパニック系の鍵屋役のマイケル・ペーニャ、一番まともな登場人物ともいえた警官ハンセン役のライアン・フィリップ、刑事グラハム役のドン・チードルなど、多くの映画で実績のある個性が揃っていた。
本作はアカデミー作品賞受賞作「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本を書いたポール・ハギスの初監督作。冷たいまとわりつくような雰囲気を出していながら、でもすさんだ心を洗うような雰囲気に変えていく、とても良い作品だったと思う。その一方で不幸なまま取り残された人や、不正のまま解決されそうにない事件を残していることが現実を突きつけているように見えて、それもまた余韻を残していて良い。「ミリオンダラー・ベイビー」に引き続いての今作の出来具合からして、このポール・ハギス、今後の活躍が非常に楽しみであり、注目して見てみたい。
マルチストーリーの傑作です。
ロスを舞台に様々な登場人物のサイドストーリーが複雑に絡み合い、エンディングへと流れ込む秀作。一人ひとりの背景が短い間に細かく描写されており、その上ところどころにギミックが張り巡らされており、観ていて飽きさせない。思わず、なるほど、ほほうと唸ってしまう場面多し。複数のアカデミー賞にノミネートされただけあります。面白かった。キャスティングも豪華。お薦めです。ただ、題名と映画全体のテーマは少し解りずらいかも。なぜこの題名???
一言では言い表せない映画
悲しみ、苦しみ、怒り、優しさ、美しさ、醜さ、切なさ、 それらが、それ以上の感情がどっと押し寄せる。
物事は順番に一つづつ起こるわけではなく、同時多発的におこる。それがとてもリアルだ。
人生も、人間も一言では言い表せない。 そしてそれは人々が繋がっていくことでさらに広がりを見せていく。
自分に見えている世界だけが存在しているのではない。自分の起こした出来事が全く見ず知らずの人の人生に影響を与えているかもしれない。そんな事を感じる映画。
大きなテーマ
人種というだけで
人種というテーマで大きなひねりもなくすーっと話が過ぎていく。いろんな話が出てきて難解。2回見ないとわからない。
昔から消えることのない人種差別を監督は斬新に描いた。監督、制作、脚本 ほとんど自分でやったポール・ハギスは自分の表現したいことが満遍なく出ている。それで作品賞。天才監督誕生だ。
泣けたり鳥肌がたったり興奮したりはしなかった。
人々の心の痛みや叫びをうまく切り取った
「ぶつかりあって、それでも人は生きていく」というのがキャッチコピーですが、まさにその通りだと思いました。
登場人物は皆、最初はささくれだっていて、他人を人種や見た目で差別化し、決定付けようとする。それによって引き起こされるちょっとしたいざこざが絡まりあって、悲劇を生んでいく。
最初はなんで彼らはこんなに嫌な人間なんだろうと思って見ていたけど、ふと思えば、自分も日々嫌なことが積み重なっていくと、ついつい他人に対してささくれだった気持ちになってしまうよなあと思わされる。
そんな気持ちで人とぶつかって、結果として自分が傷付き、それでもやはり人であるからには人と寄り添って生きていかなければならない。そんな人々の心の痛みや叫びをうまく切り取った映画であるなあと思ったのでした。
温かく静かな感動
様々な人種・職業・境遇の人々が登場し、ざらついた映像とオリエンタルな曲調からヒップホップまで幅広い音楽とで、アメリカ映画とは思えないなんとも無国籍な香りが漂う作品。
登場人物が多いけれど、その一人一人を深く丁寧に描いていて、「人間」の複雑さ・残酷さ・素晴らしさを感じさせてくれる。
伏線の張り方も、予測がつかないような斬新さで、ここで繋がるのかと唸らされた。
最後は温かい気持ちになり、静かに心に響きます。
現実世界と非現実世界のクラッシュ
この映画は久し振りに興奮を生むものだった。静かな興奮を。アメリカというクルマ社会においては2つの世界が存在する。車外にいるときの世界と車内にいるときの世界の2つ。警察官が良い例で、車内にいるときは狂気であり、車外では正義が描かれている。それが静かに興奮を呼ぶ。しかし現実社会はどちらか考えると車内と言わざるを得ない。
群像劇の傑作
菊池凛子で話題になった「バベル」と似た手法で撮られたいわゆる群像劇。
時系列をずらし、オムニバスのように様々な人間模様の1つずつを描きつつ
ストーリーの展開と共に点と点が結びついて行く…
この手の手法。ツボです。個人的に。
舞台はアメリカの中に於いても特に多様な人種を抱えるロサンゼルス。
人種差別・格差・銃など、アメリカ社会の多様な問題を分かりやすく描いていて、
登場人物1人1人の心の動きも丁寧に映し出されています。
「クラッシュ」とは単純にカークラッシュのことだけではなく
人間と人間、心と心、物事と物事の衝突・交差・繋がりを表しているんですね。
辛く悲しい出来事の中でようやく見出せた一筋の光明。やすらぎ。
自分の置かれている立場がいかに恵まれているのか思い知らされます…
「バベル」より前の作品ですが、同作を超える強烈なインパクトを感じました。
お好きな方でまだ見ていない方は断然おすすめです!
※他サイトより転載(投稿日時:2008/01/29)
人は、傷付け合う生き物だから…。
非常に地味な、群像劇です。でも、この映画がアカデミー賞を獲ったっていうのは、まだハリウッドも、捨てたモンじゃないって感じがしますね…。
サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ブレンダン・フレイザー、テレンス・ハワード、サンディ・ニュートン、ライアン・フィリップetc…と、たくさんの俳優たちがキャスティングされていますが、ハッキリ言って地味です。“コレ!”といった目立った俳優がおりません。でも皆それぞれが、そんなに長くない登場時間の中で、印象に残る演技を見せてくれます。
この映画、“差別”“偏見”“蔑み”といった人間の“負の感情”を主題に、人間と人間とがぶつかり、絡まる様を描いていますので、もおとにかく『これでもか!』と言わんばかりの悪循環(作品のクオリティのことを、指しているのではございません)なストーリーのオン・パレードなんですね。その昔『♪“変”と”変”を集めて、もっと“変”にしましょ~♪』てな歌がございましたが、これはまさに『“良くないこと”と“良くないこと”を集めて、もっと“悪く”しましょ~』てな感じの映画でございます。ですから観始めてからず~っと、何かもお胸がギュ~っと締め付けられるような感じがしてまして、それが時間を追うごとに、どんどん強くなっていくんですね。『もお、何でこんなに悪い方へばかり、話が進んじゃうのかな。ああ、やりきれんな~』て感じですね。で、中盤あたりで[ネタバレ!]子供が銃で撃たれてしまうシーンがあるのですが、その銃声が映画館に鳴り響いた瞬間、吾輩の感情も弾けてしまい、思わず『何するねんな!何てコトを…!!』と小声でつぶやいてしまいました。もお、抑えきれませんでした、ハイ…。
でも、各エピソードにそれぞれ小さな“救い”がキチンと描かれているので、最後は何か“ホッ”とした気分になれます。人間生きていく上で、色んな考えを持ち、色んな人とぶつかるけれど、そうやって生きていくのが人間なのだな~と、この映画は教えてくれます。誰にも差別や偏見の根は存在するのです。そこから目をそらさずに、むしろ正面からぶつかり合っていくのが、人間本来の姿であり、悲しき性(さが)なのですね。
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