「【朴正熙大統領暗殺事件の裁判を軸に、全斗煥(役名は別)が12.12クーデーターにより軍事独裁政権を引き継ぎ暴走する様を描いた作品。自由民主主義、法の下の人権の平等の大切さを問いかける作品でもある。】」大統領暗殺裁判 16日間の真実 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【朴正熙大統領暗殺事件の裁判を軸に、全斗煥(役名は別)が12.12クーデーターにより軍事独裁政権を引き継ぎ暴走する様を描いた作品。自由民主主義、法の下の人権の平等の大切さを問いかける作品でもある。】
ー 2023年12月に早逝された韓国の若き名優、イ・ソンギュンさんに哀悼の意を表します。-
■1979年10月26日夜。
”いつものように”朴大統領がソウル特別市の宮井洞にあるKCIA所有の秘密宴会場で、歌手、女子大生モデルを招いて晩餐が行われていた際に、KCIAの金部長に拳銃で暗殺される。
そして、金の指示で軍人でもある秘書官パク・テジュ(イ・ソンギュン)等は、大統領の側近たちを殺害し、偶々別の宴会に来ていた陸軍参謀総長の鄭昇和大将と共に、車で会場を脱出する。その際に、行き先を運転手から聞かれた金部長が口ごもる間に、パク・テジュは咄嗟に南山のKCIA庁舎ではなく陸軍本部へ向かうように指示するのであった。
ー この辺りは「KCIA 南山の部長たち」で描かれている。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、チョン・インフ(チョ・ジョンソク)が属する人権派の弁護士チームの活動が描かれる。
だが、12.12クーデーターにより実験を握った全斗煥少将(役名は別だが、以降全斗煥として記す)の脅しにより、一名、又一名と離脱する中、チョン・インフは、特に軍人であるが故にたった一度の裁判で刑が確定するパクのために、公正な裁判を求めて全斗煥と戦う姿が熱いのである。
・チョン・インフが手土産を下げ、清廉潔白なるが故に16坪の貧しい坂の上にあるパクの小さな家を訪れるシーン。小さな娘が二人、チョンを警戒する中、彼は手土産を渡しパクの妻と話した後に、長女から蜜柑を一個貰うのである。
その時のチョンの表情。
”あれだけ地位が高いのに、質素な生活。だが、妻子から慕われているパクという男を信じよう。”
そして、彼はまず裁判で”軍人だから、一度の軍法裁判で刑が確定するのは人権に反している。”と主張するのである。そして、それが却下されると車の行き先を”南山のKCIA庁舎ではなく、陸軍本部へ向かうように指示”したパクの証言者(内乱罪適用は不当である事を証明するため)として、同乗していた陸軍参謀総長の鄭昇和大将を口説きに口説いて、漸く証言する事を納得させるのである。
・だが、全斗煥は、自らより地位の高い”軍人は政治に介入すべきではない”という思想の鄭昇和大将を敵視し、ナント部下を陸軍本部に乗り込ませ鄭昇和大将の部下を射殺し、彼を誘拐するのである。
■今作で全斗煥を演じたユ・ジェミョンが憎らしいほど尊大で、自らの権力欲を満たすためには手段を選ばない男を圧倒的な演技で見せている。
「ソウルの春」で全斗煥を演じたファンジョンミンも凄かったが、彼も禿げメイクはしていないが、悪人面が凄いのである。更には裁判を別の部屋でヘッドフォンで聞きながら、定期的に封筒に入ったメモを届けさせる(映画では、誰が送っているかは描かれない。)陰で全てを操る頭の良さも描かれている。
・鄭昇和大将の証言が得られなくなったチョン・インフは、夜のゴルフ場でゴルフを楽しむ全斗煥の前で土下座し、彼が打ったボールを何度も取りに行き、”頼むから、これ以上人を殺さないでくれ。”と涙を流しながら頼むシーンは、少し切なくもチョンの漢気を感じたモノである。
その後、チョンとパクが面会するシーン。チョンはパクの長女に貰った蜜柑を剥いてパクに差し出すのである。もう、彼が娘とは会えないと知っての事であろう、と思う。
そして、結審裁判で、パクが涙を堪えて言った言葉。
“第6師団に居た頃が一番良かった。妻の料理の匂いが流れ、子供達の声が聞こえて来る生活。何度も、第6師団に戻してくれ、と言ったのだが・・。”
その言葉を聞いた傍聴席にいた妻が泣き崩れる姿・・。
<そして、裁判でKCIAの金部長以下に対し、極刑が言い渡されテロップで”パクだけは金部長達より早く死刑が執行された”と流れるのである。
今作は、朴正熙大統領暗殺事件の裁判を軸に、全斗煥(役名は別)が12.12クーデーターにより軍事独裁政権を引き継ぎ暴走する様を描いた作品であり、自由民主主義、法の下の人権の大切さを問いかける作品でもある。>
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