劇場公開日 2025年10月24日

「配偶者の不満を理解する勉強になるかも」ローズ家 崖っぷちの夫婦 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 配偶者の不満を理解する勉強になるかも

2025年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

宣伝も上映館数も地味な作品。他にやっぱり地味な邦画の観賞候補が有って選択に迷ったが、ハリウッド映画欠乏気味の状況が続く中カンバーバッチの名前を見て、彼もしばらく見ていなかったので彼を観たくて選択。

【物語
イギリスで出会ったテオ・ローズ(ベネディクト・カンバーバッチ)とアイヴィ(オリヴィア・コールマン)はアメリカに渡り、カリフォルニアで幸せな結婚生活を送っていた。 テオは建築家として順調なキャリアを積み、アイヴィは夢だった料理店を地元で開き軌道に乗りつつあった。二人の子供にも恵まれ、順風満帆な家庭生活に見えた。

ところがテオが設計し、地元の名所になるはずだった自信の建築物がお披露目当日に大嵐に襲われ、大勢の招待客の目の前で倒壊。 倒壊の原因は設計ミスとされて職を失い、テオの人生は突如として暗転する。 当面アイヴィの料理店経営で生計を支え、テオは専業主夫となって育児、家事を担当することにする。

アイヴィの料理店はマスコミに取り上げられたことで爆発的に客が増え、各地に店舗を増やして行く。 一時的のはずだった夫婦の立ち位置は変わらぬまま10年ほどの月日が流れる。経済的には何ら問題は無かったが、二人の精神的バランスは徐々に崩れて行く。

【感想】
期待通りのカンバーバッチと妻役オリヴィア・コールマンの掛け合いが素晴らしく、それが全てとも言える。大いに笑えて、大いに楽しませてくれた。

コメディー作品として楽しめる一方、男社会から男女同権社会へ移行中の社会の中で、とある家族を描いた社会派作品とも言える。現代の日本ではタイムリーなテーマだと思うが、女性の社会進出で日本の先を行くアメリカでも、こういう作品が作られるということは、アメリカもまだまだ移行途上ということなのだろう。それだけ社会通念の変化には時間が掛かるということらしい。

日本でも現在の若い夫婦では、専業主婦が絶滅危惧種になりつつあるが、我が妻はギリギリ「普通に専業主婦」。「普通」の意味は俺も妻に働いて欲しいとも思わなかったし、妻も働きたかったわけではなく、結婚による転居・退職が発生したため自然と専業主婦に、つまりお互い我慢してそうしたわけではないという意。

しかし、それでも作品終盤でテオがアイヴィにぶちまけたような不満を時々漏らす。簡単に言えば「育児・家事がどれだけ大変か分かっているの?」「外で働く方がよっぽど楽よ」的なこと。こちらからすれば「俺がどれだけ会社で嫌なこと、つらいことを我慢しているか知らないだろう?」と思うわけだ。 こんな思いは我々世代以上の専業主婦家族には「あるある」だと思うし、妻の気持ちも想像出来ているつもりだったが、本作で専業主夫をしている男のテオの口から聞くと、より腑に落ちた。「うちのカミさんの気持ちもこれだな」と。 本作では成功している妻への、テオの妬みも加わっているのだが。

共働きの夫婦であれば、外で働く苦労は共有されているのだと思うが、これからの社会では妻の方が出世して収入にも格差がつくということは普通に起こるだろうし、結果として最初は「半々の約束」だった家事・育児割合が夫の方が高くせざるを得ないという家庭も珍しくなくなるだろう。そういう状況ではテオに近い気持ちになる男達は増えるのではないだろうか?

そういう意味では若い世代も予習を含めて、観ておいて損は無いかも。

泣き虫オヤジ
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