「馬鹿馬鹿しいって本作の為の言葉」ローズ家 崖っぷちの夫婦 クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
馬鹿馬鹿しいって本作の為の言葉
日本での米国映画のシェアが落ち続け、遂にワーナーブラザーズが国内配給を東宝東和に託す程に、配給するメリットがなくなってしまった。なにしろ邦画が強い、強すぎます。言わずもがな「鬼滅の刃」から「国宝」「チェーンソーマン」までヒットで、洋画の入る隙がありゃしない。当然に米国系配給会社はひと昔前ならば当然のように日本配給もした作品を今ではストップもしくは劇場スルーのいきなり配信の有様。挙句、軽いラブストーリーからコメディなんてもちろん、日本公開されてません。そんななか本作が公開されたのは実に喜ばしいことで、ディズニー傘下の20世紀スタジオ傘下のサーチライト・ピクチャーに感謝しなければなりませんね。
と褒めるのはここまでで、実に馬鹿馬鹿しき作品でした。イギリスの名優であるオリビア・コールマンとベネディクト・カンバーバッチの2人をよりによって米国西海岸での夫婦喧嘩騒動に据えるなんて。そもそもこれはコメディなのか、悲劇なのか、ロマコメなのか?「ローズ家の戦争」1989年のリメイクなんて有り得ないし、意味ないでしょ。マイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーの美男美女コンビのハッピーなロマコメは、それはそれは楽しかったですよ。ところが今回の2人はそんな形容詞から大きく逸脱し、まるでロマンチックとは程遠い。ならばシリアスに深刻に夫婦のありようを模索すればいいものを、ほとんどイージーな脚本によってどっちつかずの駄作に成り下がってしまった。
初めて会って数分後に冷蔵庫の中で「始める」って、ガラス窓に引きずられる手を映し出すなんてコメディの定石描写が恥ずかしい。あのダサイ建築物のCGが破壊されるのは見え透いて、コールマンの左右非対称の髪型がシェフである事を忘れさせ、あれよあれよの人気レストランってのも苦労の跡がまるで見えず、スタッフにポリコレそのもののラティーノと黒人を配し、黒人にはゲイまで担わされる始末。シェフはたった一人でしょ、あり得ません。あれよあれよで全米レストランチェーンの出来上がりなんて言う安易には到底ついていけません。海岸線の自然林を切り開いての豪邸の醜さよ、自然破壊の傲慢ぶりに吐き気を催す。そしてあの家の内部! いかにもセット然で安っぽい。なによりフードロスの神経を逆なでするような描写ばかり。食べ物を扱うシェフにあるまじき行為ってのが分からないのかね、制作陣は、情けない。
とどめは、銃口を自分に向けた相手、そして 重篤なアレルギーを知ったうえでアレルゲンを食べさせた相手、などと復縁させるプロットって信じられません。仮にもそうしたいのであれば全編をもっと軽いコメディタッチにすべきでしよ、あり得ない。オスカー女優コールマンの輝きはゼロで、カンバーバッチも阿呆なマーベル映画出演はとっとと終わらせ演技力を磨くべきでしょ。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
