キス・ザ・フューチャー

劇場公開日:2025年9月26日

解説・あらすじ

アイルランドのロックバンド「U2」がボスニア紛争終結後の1997年にサラエボで行った伝説のライブの舞台裏をとらえたドキュメンタリー。俳優のベン・アフレックとマット・デイモンがプロデューサーを務めた。

紛争により銃弾が飛び交うボスニアで、若者たちは解放を求めて夜な夜な地下で行われるパンクロックのライブに熱狂していた。そんな中、アメリカの援助活動家ビル・カーターは、戦争や人権など社会的なメッセージを発信してきた世界的ロックバンドのU2をサラエボへ招くことを思いつく。U2はサラエボ行きを決意するが、安全上の理由から断念を余儀なくされる。そこでビルは、衛星中継で戦火のサラエボからの様子をU2のZOO TVツアーに届けることに成功する。

そして、紛争終結から約2年後の1997年9月23日。U2は約束を果たすべく、サラエボで4万5000人を前にライブを敢行。平和と民族融和のためのライブは人々に強烈な印象を残し、今なお語り継がれている。

紛争により分断された人々を音楽の力で再びひとつにした伝説のライブが実現するまでの道のりを映し出す。

2023年製作/103分/G/アメリカ・アイルランド合作
原題または英題:Kiss the Future
配給:ユナイテッドピープル
劇場公開日:2025年9月26日

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映画レビュー

4.0 芸術やカルチャーがもたらす力に圧倒される

2025年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

約30年前のボスニア紛争、とりわけセルビア人勢力がサラエボを包囲し、市民に砲撃や銃撃を浴びせた数年間に焦点を当てたドキュメンタリーである。しかしこれは紛争の記録にとどまらない。実はその戦下では市民が夜な夜な地下会場でディスコやライブを開催し、極めて特殊な音楽ムーブメントが生まれていたと言うのだ。そこに決定打を与えたのが、U2とサラエボ市民との交流である。この知られざる一連の歴史の裏側は、展開を見守るだけでもドキドキするし、人間の絆や音楽が持つ可能性についても大いに考えさせられる。当時を述懐する多様な顔ぶれも素晴らしく、決してU2の存在をメインに据えるのではなく、あくまで主役はサラエボ市民であり、音楽の力そのもの、という照準の当て方も練り抜かれている。あれから30年。相変わらず世界から悲しみはなくならない。が、希望を捨ててはいけない。本作には現代に向けた力強く崇高なメッセージが詰まっている。

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牛津厚信

4.0 30年前の話…でもない

2025年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

現代において、現在進行形で起きている様々な出来事に通じているものがあった。
その事に驚きショックを受けた。

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Avalon

4.5 キーウやガザでもコンサートができることを願う。

2025年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

キーウやガザでもコンサートができることを願う。

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わんわん!

5.0 地獄の中の人々の憑代(よりしろ)だったエンタメ

2025年10月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

本作はU2のサラエボ入りまでのストーリーを追った映画である。
個人的に好きな『ミス・サラエボ』(今回は曲そのものよりも裏側にあったストーリーが主)がテーマということ興味を持ち、久しぶりに2回観た映画になった。

『冷戦』後より地球上で勃発し続けている民族紛争、その中でも特に注目されてきた旧ユーゴスラビアを構成した諸国間の戦争。
とりわけ『民族のモザイク』状態だったボスニア・ヘルツェゴビナは血みどろの状態に陥り、かつて冬季五輪も開催されたサラエボはセルビア側の武装勢力に包囲され、兵糧攻め状態に。
挙げ句の果てには一般市民が狙撃手の標的にされ、ボスニア戦争末期にはムスリムの人々や市場の客も多数殺されたほどだった。

そんな『地獄』というのも生ぬるいといえる極めて過酷な状況下の人々の憑代だったのが音楽とコメディ番組だった。

当時大規模なツアーを続けていたU2のメンバーも民族紛争を憂いており、援助活動家のビル・カーター氏の働きもあり、ボノ(Vo.)とサラエボの人々がZOO TVツアーの演出で使われる世界のニュース映像のセットを使う形で対面した。
その中で「どうせ何もしてくれない」と絶望感に打ちひしがれたサラエボの人々の声に「リアリティ番組みたい」「他人の不幸で楽しんでいるみたいだ」とショックを受けたツアーメンバー。

かねてよりサラエボ訪問を望んでいたボノは、停戦後にようやくPOP MARTツアーでの訪問が実現した。

当事者のインタビューや記録映像からだけでも、私たちから見えないところで彼等が大変な苦労をしてきたのだろうことも窺える。

・人の強欲さを隠し言い訳をするために宗教や民族が口実として使われる(ボノ)
・弱いものいじめをしたい人物から芸術が狙われる。芸術の力が恐れられる(ジ・エッジ)
という(大まかな)内容の2人の言葉は必聴である。

また、「音楽は上手い下手よりも共感できれば良い」と語ったのが元アメリカ大統領ビル・クリントン氏というのも意外な印象だった。

音楽が人々を支え、停戦後のボスニアの人々が集うきっかけになったのである。
そのことだけでも、音楽を好きで良かったと思える映画である。

それでも、『人々は過ちを繰り返す』というU2の作品群の底流にあるテーマ(ボノ談)は心に留めておきたいところである。

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まつだですがなにか?