サターン・ボウリングのレビュー・感想・評価
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父の衣を借る野蛮な狩り
暴力描写がえげつない。
殴打から死に至り、処理するまでをじっくり時間をかけ丁寧に描く。また掘り出された死体の捉え方がトラウマレベルである。ホラー映画のそれとは違う、リアリティのある怖さ。
ここまで写さなくてもいいのではと思ったのだが、パトリシア・マズィ監督のコメントを読むと、「暴力はどう生まれるのか」という問題から逃げないために、意図的に見せたとしている。
また、ヒムパシー(男性加害者に対する過剰な同情)への批判的視線もあるようだ。確かに加害者のアルマンは見た目も悪くなく、最初、女性にはむしろ優しく、紳士的であるように見えた。婚外子で苦労したはずだし同情の余地があるのかなと思えたが、あの暴力描写を見せられたら、シンパシーは欠片なく霧散しまった。監督の意図に見事にハマってしまったようだ。
死体を包んだ黒いビニールの塊を、ダストシュートから捨てるショット。一瞬画面が真っ暗になったあと、唐突に光の輪が見えてくる。「サイコ」を意識しているのかとも思ったが、見たことがないすごいショットだった!
ザ・フランス映画
監督はリスクないとか言ってだけど…監督ぅ〜!
何の予備知識ないままに観る事をおすすめします。
導入直後、1人の男を丁寧に追いかけていく物語構成に単調さを感じたりもしましたが、疎遠だった兄やマフィアのような猟友会のメンバーが出てくる事で「主人公の身に何か嫌な事が起こるのではないか」と不安が増殖していきました。
そして…中盤の展開に唖然!
上映前に監督自身による日本語でのメッセージがあり、「リスクはない」と仰っていたんですが、とんでもない。
観る人によっては精神的にダメージを負うかもしれない「リスク」がしっかりありましたよ。
この手の作品が好きな者からしたら手を叩いて喜べる展開なんですが、苦手な人には徹底的に嫌われそうな展開でした。
人を選ぶ作品であるのは間違いないんですが、あの終わり方といい、全編に漂う空気感といい、「犯罪映画」に括られる作品が好きな人は間違いなく劇場に行った方が良いです。
物語がありきたりなだけに描写を楽しむ事に集中できる作品なので是非「犯罪映画」の世界にどっぷり浸ってみて下さい。
ハンター用?ククリナイフじゃね?
相続でボウリング場オーナーとなった刑事と、そのボウリング場の支配人になった腹違いの弟と、町の墓地で死体が次々にみつかる連続殺人事件の話。
猟友会メンバーでボウリング場経営者でもあった父親が亡くなり相続したギヨームが、前科こそないが暴力的でプータローの弟アルマンをボウリング場の支配人として雇って巻き起こっていくストーリー。
運営に口を出さない条件とはいえ、収益目標とか報酬とかの話しも無しですか?な慌ただしい船出から、予想通り鼻高々で勘違いした様子をみせるアルマン…と思ったら、どんな癖だよ!
そして1ヶ月後、墓地から埋葬されていない遺体が!となって行くけれど、観賞者的には誰が犯人かわかっている訳で、犯人捜しのサスペンスでは無いし、猟友会と活動課のVS物語でもないし、もちろんその間を取り持つギヨームをみせる訳でもないしw
ということで刑事と犯人がどう交わっていくかをみせる、ちょっと変わった物語で、ラストは急に駆け足だし妙にあっさりだったけれど中々面白かった。
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絶妙に観に行くかどうするか悩んでる作品の試写会招待のお知らせがきた時が一番興奮しますね。
特典はステッカーでした。
R18だったりボウリング場を舞台とした猟奇的殺人というところに惹かれたんですが、登場人物がクソ野郎ばっかり以外のところは正直予想の範疇を超えず、グロさもグロいっちゃグロいんですが、ここ最近アホみたいにグロいやつを観たせいか、少しパンチ不足にも思えました。
現実的なグロさという面では今作の方が勝ってはいるのですが。
ギョームとアルマンという兄弟2人をメインに展開していき、猟奇的殺人を繰り返す弟アルマンと警察官のギョームの関係性、父親から受け継いだボーリング場をきっかけに秘めていたあれやこれやが目覚めていくといったストーリーで、アルマンが性欲などの欲とは違う快楽で殺人を行なっている狂気っぷりはひしひしと伝わってきました。
全体的な行動が支離滅裂かつ身勝手なので良い具合にフラストレーションは溜まっていくのですが、それがドカンと爆発するところはあまり無かったのが惜しかったです。
殺人にトリックはほぼ存在せず、基本的には残虐に力任せに殺していくので、計画性よりかは自分の衝動で動いているなと感じました。
一方のギョームは警察官としての職務を全う…しているかと思ったら、ストーカー被害を受けているであろう市民の意見をスルーした結果、その市民が自殺してしまったり、女性活動家が寄ってきたかと思ったらイチャイチャし出して、職場でベロチューをかましていたりと、シンプルだらしない人間で引っ叩きたくなりました笑
途中のシーンで活動家が差し入れとしてコーヒーを持ってきたのですが、めっちゃちっちゃいカップで持ってきて、ギョームが飲んだかと思ったら自分も飲むという行動をしたので、そんな事をしたらいくら差し入れでもブチギレると思います笑
終盤にかけて動物狩りを行なっている人物がボーリング場でたむろしている事を怪訝に思っているアルマンがイラついていたり、ギョームが犯人に近づいていく描写がされていきますが、盛り上がりそう!と思ったら幕引き自体はあっさりいってしまったので、もっと深掘りして欲しかったなーと思いました。
ほぼライド感で映画を観ている人間なので、今作の描写が何らかのメタファーもしくはモチーフになっているかどうかはあんまし分からず、そこをもっと理解できれば良かったんですがその領域までは辿り着けず。
でも観れない事はないですし、メタファーにビビッと来る人にはジャストミートな作品なんじゃないかなと思いました。
ボウリング場での人殺しが観たい人は「デス・ボウリング」を観るべきだなと思いましたスットボケ。
鑑賞日 9/17
鑑賞時間 19:00〜20:54
女性監督が描く有害男性性
《試写会にて鑑賞》
この作品はとても深いです。
スローテンポ&セリフが少なめなので
退屈に思ってしまいがちですが、その分、
メタファーやモチーフがてんこ盛り。
この意味がわかるとかなり楽しめると思います。
例えば…
一階にあるボウリング場は父の「胃」
避難用ダクトは父の「食道」
5階の部屋は父の「脳」
車のドアからなびかせているスカーフのシーンは
母親を恋しがっている…など。
ちなみに犬は父親の小さな霊というイメージだそうです。
犬がベッドを占領してアルマンに追い払われるシーンは
大嫌いな父に抵抗していることになります。
この兄弟はどちらが悪くてどちらが善人というわけではなく、どちらにも問題ありありなところが斬新。
また、ヒムパシー、フェムサイドというテーマも盛り込まれています。
アルマンが父親と同一化していく過程が見所。
そしてなんと、監督の息子が主演!
よく全裸で演技できたなあと感心。
解説を聞いて2回目観るのが楽しみになりました。
より面白く鑑賞できそう!
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