ほどなく、お別れです : インタビュー
浜辺美波、目黒蓮の“背中”で感じた作品愛

映画「ほどなく、お別れです」は、「小学館文庫小説賞」大賞を受賞した長月天音の同名ベストセラー小説を原作に、葬儀会社でインターンとして働くヒロインが、指南役の葬祭プランナーとともに、“最高の葬儀”を目指す姿を描く感動作だ。
監督を務めるのは、「アオハライド」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の三木孝浩。主演を務める浜辺美波と目黒蓮(Snow Man)が、生と死に向き合う葬祭プランナーを演じ、初共演を果たしている。ふたりに話を聞いた。(取材・文/内田涼、写真/根田拓也)

●「あえて意識はせず、自分の感情を大切に演じました」(浜辺)
浜辺が演じるのは、就職活動全敗の末に、葬儀会社のインターンとなった主人公・清水美空。「脚本が素晴らしくて、泣いてしまったのを覚えている」と作品の出合いを振り返る。三木監督とは「思い、思われ、ふり、ふられ」(2020)に続くタッグだ。

浜辺「三木監督からは『ご遺族や故人様に向き合ったときの気持ちを大事にしてほしい。きっと、美空の成長物語を描けるから』というお手紙をいただき、あえて意識はせず、自分の感情を大切に演じました。演技以外で“死”というものに、しっかりと向き合ったことがなく、オファーをいただいた際は演じられるか少し不安もありました」
主人公の美空は「亡くなった人の声を聞くことができる」という秘密を抱えており、「自分にしか見えない故人様の表情や声を通して、最後に残した感謝や後悔と対峙できる。役としても、自分自身としても『どんな感情になるのか想像できないな。でも、想像したいな』と思いながら撮影に挑みました」と語る。

●「いまを生きる希望と喜びが感じられるのも、この作品の魅力です」(目黒)
目黒は、美空をスカウトし厳しく指導する葬祭プランナー・漆原礼二役を務めた。葬祭プランナーとは、遺族の希望に沿って故人に合った葬儀を提案し、全ての手配と進行を執り行う仕事だ。

原作の印象は「“お別れ”をテーマに描かれていて、悲しいなと思う一方で、希望がもてる部分もある」といい、「お別れはしたけれど、この先、いつかまた会えるかもしれない。そんな考え方はとても素敵だなと思いました」と、前向きなメッセージを受け取っている。

目黒「だからこそ悔いのないように、当たり前に感じる日常を、どれだけ大切に生きられるか。人として、一番大切なことを教えてくれる、そして(俳優として)伝えることができる作品に参加できて、こんなに嬉しいことはありません。いまを生きる希望と喜びが感じられるのも、この作品の魅力です」
三木監督とは初タッグ。「大らかさをまとった方。現場では、一歩引いたところで、温かくドシッと見守ってくれる。のびのびした現場でしたし、お芝居にも入りやすい環境なので、とても集中できました」(目黒)。

●「本当に妥協を許さない方。『気が抜けない』と背筋が伸びた」(浜辺)
劇中では、美空が、誰よりも真摯に故人と遺族に寄り添う漆原の姿勢に憧れを抱き、自身も葬祭プランナーを志すことを決心する関係性。さまざまな別れのシーンを経て、美空の成長、漆原の祈りが結実し、最期の瞬間に最高の奇跡が起こる。
浜辺「上司と部下という間柄なので、あまり会話をする機会はありませんでしたし、私が少し後ろで控えていることが多かったのですが、目線が合わずとも、漆原さんの仕事に対する姿勢、それに目黒さんの作品への愛を“背中”で見せていただいた」

目黒「確かに、仕事する姿勢を、背中で見せる関係性は現場でも意識しました。三木監督と演技について相談する浜辺さんの姿も拝見して、貪欲に成長したいという思いは、まさに美空だなと思いました。現場の空気を温かいものにしてくださった」
公開に先がけ、都内で開催された完成報告会(https://eiga.com/news/20251120/24/)では、浜辺が「目黒さんは、私が思っていた50倍ぐらい忙しい方」と語り、大きな話題に。
インタビューでは、浜辺が「納棺師の所作も全て完ぺきで。きっと睡眠時間を削っていらっしゃったと思いますし、本当に妥協を許さない方なんだなと。私も『気が抜けない』と背筋が伸びました」と、そのストイックな姿勢から受けた刺激を明かし、目黒も「物語の軸は、美空の成長。それを浜辺さんが体現されていて、漆原も含めて誰もが応援したくなる美空の姿を作り上げていた」と語り、浜辺のひたむきな姿に大いに感化されたようだ。

●「人生は1回限り。いろんなことにチャレンジしたい」(目黒)
大切な人との別れは、いつか必ずやってくるもの。だが、自分の身に起こってほしくないことは日頃、遠ざけて、考えないようにしがちだ。「自分だったらどうするか?」。浜辺と目黒が故人と寄り添う葬祭プランナーを真摯に演じた「ほどなく、お別れです」を通して、そんなことを考えてみるのは、観客にとって“生きること”を前向きに捉える一助にもなるはずだ。
目黒「普段は、どうしても“死”というものを非現実的なものに感じてしまいがちですが、誰かを見送り、誰かに見送られる。それは誰もが経験することだと改めて感じさせてくれる作品でした。だからこそ、少しでも悔いの残らない生き方ができれば。大切な人と大切な時間を、1秒でも長く作れればと思いますね。自分の人生は1回限りなので、いろんなことにチャレンジしたいです」

浜辺「現場でお芝居していたにも関わらず、試写で初めて見た時は、涙がこみ上げてきました。故人様が遺族を思う気持ち、遺族の方々が故人様を思う気持ち。そして、葬祭プランナーたちが、素敵な区切りにしたいと思う気持ちは、改めて尊いものだなと。この映画を見て、家族と会う頻度をもっと増やしたいと思いますし、気恥ずかしくて聞けないことももっと聞いてみたいと思いました」