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遅めの夕飯を食べた後、ボーっとテレビを眺めていると、不穏な音楽が流れ、画面のアルファベットの配列が歪みはじめた。粗い画質の画面に1人の老人が写し出され、飯沼一家に謝罪しますと言い始めた。テレビ東京系列のTXQ FICTIONである。私がはじめて観たのは、第3話で、無言の家族旅行のビデオテープの回であった。それを観たときに、なんともいえない不穏な雰囲気に、画面に釘付けになった。番組が終わった後、TXQシリーズのことを調べて、今の時代にこんな訳の分からないホラーを地上波で流してくれる番組があることに感動した。近藤監督は、最近ではなかなかお目にかかることのできない不気味系ホラーのニュースターである。そんな監督が新しい映画を作ったとのことで、迷わず鑑賞することにした。
主人公は、イベントのカメラマンであり、兄弟で撮影を行っている。今回も普段どおり兄弟で協力して撮影を行うこととなった。当初は、結婚式かと思ったが、新郎が現れない。参列する者の様子にもどこか違和感がある。この式はいったい何なのか…。
入場する際に、赤い封筒が渡される。観客は、本作より招待を受けて式に参列する形となる。この特別感は嬉しい。イシナガキクエのときは視聴者から目撃情報を電話で収集した。近藤監督は、視聴者参加型をつくるのが上手い。
本作が、何の式であるかは、勘のいい人なら中盤あたりで分かるはずである。注目すべきは、結婚式でいうところの新郎にあたる人物の紹介の仕方である。
TXQシリーズと比較すると、結末は分かりやすく、物語として筋が通っている。しかし40分という短い上映時間は、物語の起承転結の細部を描くには不十分であり、部分的描写のみで観客の考察により物語を補完するには充分すぎた。個人的には、ここまで明らかに結末を説明するのであれば、上映時間を増やし、ストーリーを根太くしたほうが、満足度は高いと感じる。
現在TXQシリーズ第3弾が放送中であるが、やはりこのシリーズのモキュメンタリーは面白い。深夜にフィクションと知らない人がこの番組を観て、画面に「歌うと死ぬ唄」が流れてきたらどんな気持ちになるだろうか。このような演出は、本当に私をわくわくさせてくれる。今後も、近藤監督、TXQシリーズには大いに期待している。