カーテンコールの灯

劇場公開日:2025年6月27日

解説・あらすじ

「セイント・フランシス」の脚本・主演ケリー・オサリバンと監督アレックス・トンプソンが共同監督を務め、壊れかけた家族の絆が再生していく様子を「ロミオとジュリエット」の物語に重ねて描いたヒューマンドラマ。

アメリカの郊外の街。建設作業員のダンは家族に起きた悲劇から立ち直れず、仲の良かった妻や思春期の娘とすれ違う日々を過ごしていた。そんなある日、彼は見知らぬ女性に声をかけられ、アマチュア劇団の舞台「ロミオとジュリエット」に参加することになる。経験もなく乗り気になれないダンだったが、個性豊かな劇団員たちと過ごすうちに居場所を見いだしていく。やがて突然の変更でダンがロミオ役に大抜てきされるが、自身のつらい経験が重なり演じることができなくなってしまう。そして本番当日、家族や仲間の思いが詰まった舞台がついに幕を開ける。

シカゴの舞台や映画に出演してきたキース・カプフェラーが不器用な父ダンを繊細に演じた。それぞれ俳優で実生活でもキースの家族である妻タラ・マレンと娘キャサリン・マレン・カプフェラーが劇中でも妻役と娘役を務め、「逆転のトライアングル」のドリー・デ・レオンが共演。

2024年製作/115分/PG12/アメリカ
原題または英題:Ghostlight
配給:AMGエンタテインメント
劇場公開日:2025年6月27日

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映画レビュー

5.0地味シブな中年男女たちが織りなす珠玉の傑作

2025年7月31日
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村山章

3.5演劇を通じて浮かび上がる家族の痛みと再生の道

2025年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

じっくり味わいの沁みる良質なヒューマンドラマである。あらかじめ言っておくと、キャストは無名だし、題材も派手なものとは言い難い。それに序盤は、トラブルメーカーの娘を巡って両親が頭を悩ませる場面から始まり、事情を知らない我々からすると多少の”とっつきにくさ”もほとばしる。だが、メインの父親が地域劇団に足を踏み入れていざ「ロミオとジュリエット」の世界にのめり込み始めると、途端に何か言いようのない魅力の実が育ちはじめる。これまで演劇に縁もゆかりもなかった彼が物語に触れ、輪の中で役柄を見つけ、演技へ情熱を捧げることで、いつしか彼ら3人家族がひたすら辿ってきた大きな悲しみの旅路が浮き彫りになっていく。この脚本と構成の妙。溢れ出る感情。キャストが無名だからこそ先入観なく内面に溶け込むことができる尊さ。幕が上がる。演劇モノ特有の高揚感が物語を席巻していく。世代を選ばず、多くの観客の心に灯をもたらす良作だ。

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牛津厚信

映画とは直接の関係はないけど恥ずかしい点

2025年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 こんな思い、どれだけの人に通じるのか分かりませんが。

 例えば、こじんまりした講演会に参加したとします。お話の途中で講師の方から突然、

 「では、その事について皆さんがどう考えるか、お隣の方と話し合ってみて下さい」

と求められる事があります。僕はこれが無茶苦茶苦手なのです。背景も個性も考えも分らぬ初対面の人と話し合って下さいと急に言われても、そんな事恥ずかしくてできる筈はありません。講師の方もその雰囲気を察して、

 「初めての方とでは緊張するでしょうから、アイスブレイクとして『最近観た映画、読んだ本』でお話を始めて下さい」

と仰います。でも、そのわざとらしさが一層恥ずかしくて堪らず、その場から逃げ出したくなるのでした。誰とでも自然な笑顔を交わす事が出来るアメリカ式の対話スタイルなのかなと想像します。

 そこで本作です。一家に起きた何か只ならぬ出来事をきっかけにバラバラになった家族が、アマチュア演劇のグループに加わる内にその傷が癒され、一家の出来事も明らかになって来るという物語です。穏やかで暖かなお話はとても心に染みるのですが、僕が強く心に残ったのは演劇の稽古場面でした。それがまさしく「おとなりの方と話し合って下さい」型のトレーニングなのです。

 「えっ?お芝居と直接的関係は無い様に見えるけど、こんな事もしなくちゃならないの?」

と僕は客席で身を捩ってしまいます。例えば、人前で衣服を脱いで裸になるなんて事はお芝居ならば僕は別に恥ずかしくはありませんが、心を裸というこのトレーニングは耐えられそうにないなぁ。

 ちなみに、映画自体は大変よい作品でした。

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La Strada

4.0オーボエによるオーケストラのチューニングで幕を開ける

2025年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なぜ、オーボエによるチューニングが選ばれたのかは、劇中で明らかにされる。
大きな悲劇を経験し、それと向き合うことができないでいた家族。父親の(転職を余儀なくされたらしい)迷える道路作業員ダン(キース・カプフェラー)が素人劇団に参加することにより、一筋の光明がさしてくる物語(原題はGhostlight-舞台にさす一筋の光)。ダンを演じたキース・カプフェラーも、あくまで素人として劇に参加することもあり、一貫してOld School(古い人間)として振る舞った。
前半、一番目立ったのは、ダンを劇団に誘ってくれた小柄のプロ俳優リタ。演じているドリー・デ・レオンは、フィリピン系らしい。ダンの妻シャロン(実の奥さんタラ・マレン)や娘デイジー(本当の娘キャサリン・マレン・カプフェラー)が劇に関与するようになると、目立たなくなったことにも、好感が持てた。
後半は、デイジーがよかった。それまで、16−7歳なのに、タバコや酒を飲み散らし、学校でもブーたれているだけだったのが、演劇、ミュージカルが出てきた途端、生き生きする。
劇の途中、建物の外で雨が降ってきた時、なぜか、あのオーボエの音が思い出された。
ただ、それだけの映画なのだけれど、郊外の平屋の家、運転台の後ろが網目のトラック、奥さんのシャロンが教員だったらしいことなど、リアリティがあった。
夏の夕暮れにぴったりの映画として、おすすめ!

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詠み人知らず