「悪魔とのダンスは、至高の映画館体験」罪人たち とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
悪魔とのダンスは、至高の映画館体験
時として生まれながらに真の音楽を鳴らす者がいて、その音楽は生と死のベールを曖昧にしてしまう…。そんなふうにあらゆるジャンルもカルチャーも清濁併せ呑む、唯一無二のカタルシス。黒人の歴史を語る上で欠かすことのできないブルースから今日まで脈々と続く音楽の広がり、ルドウィグ・ゴランソンによるスコアと素晴らしいサントラの充実っぷり。べらぼうに素晴らしい、IMAX撮影も美術も圧巻。
タイトルの「罪人」とは?吸血鬼による噛み跡と、銃痕の類似性。人種差別が憚られることなく社会的に全肯定されていた白人至上主義全盛の時代に、真面目に生きていたにも関わらず犯してもいない"罪"で投獄や罰を受ける者もいれば、また生き延びるために"罪"を犯さざるを得なかった者たちへ。傷跡を抱えて生きていく。根底に流れる形で、頭でっかちや説教臭くなく壮大なテーマを自然と織り込んでいて、本当にいい映画・語り口ってこういうことだよなと感心した。籠城モノにKKK、吸血鬼に噛まれて仲間になっていく図式もまた示唆的・表象的。そして性の話も。タランティーノもジャンルを更新するけど、タラちゃんの場合はあくまで多くの作品をレファレンス(出典)する。
王道から意表をつく真のオリジナリティ。安易なジャンプスケアに頼らない巧みな演出=本物の恐怖にビクビクと怯えて、血みどろなスリルライドに興奮して、歴史ありな胸打つドラマに泣いて、ガッツポーズしたかと思えばグッとエモくなる…。日が沈むまでの数時間は、人生で最高の一日だった。日中パートが決して本題に入るまでの助走や説明パートに成り下がることなく、それ自体にしっかりと意味も血も通っているのを感じて、鑑賞後の余韻に繋がる厚みをもたらしている。
ライアン・クーグラーの盟友で若き盟友な、本作でも二の腕(上腕二頭筋?)仕上がりすぎ腕たくまし太すぎなマイケル・B・ジョーダンの一人二役な双子は青と赤。冷静キャラとお調子キャラの対比は一見分かりやすいものの、そこはクーグラー流石に面白い。近年よく見る複数の画角がシーンやカット毎に入り混じるカット破りな構成すらも。クーグラー✕黒人の歴史。あくまでエンタメとして、それも半端なく面白いものとして昇華してしまう完全オリジナル作品で、ライアン・クーグラーの天才っぷりを遺憾無く感じられるの大傑作!トム・クルーズ絶賛も納得のシアター・エクスペリエンスはIMAXでの鑑賞推奨だ!
P.S. 公開ラインナップ最強すぎる今週末の中でも頭一つ抜けて楽しみにしていた本作、やっと観られた!!
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