兄を持ち運べるサイズにのレビュー・感想・評価
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家族の大切さを改めて感じさせてくれる
■ 作品情報
疎遠な兄の死をきっかけに、家族が遺品整理を通して絆を再確認する人間ドラマ。監督・脚本は中野量太。原作は村井理子のノンフィクションエッセイ「兄の終い」。主要キャストは、柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり。共演に青山姫乃、味元耀大。
■ ストーリー
作家として活動する村井理子(柴咲コウ)は、何年も疎遠だった兄(オダギリジョー)の突然の訃報を警察からの電話で知らされる。理子は兄の残した後始末のため東北へ向かい、そこで7年ぶりに兄の元妻である加奈子(満島ひかり)と娘の満里奈(青山姫乃)に再会する。彼らはゴミ屋敷と化した兄のアパートを片付けながら、マイペースで自分勝手だった兄に対する不満をぶつけ合う。しかし、理子が兄への悪口を続ける中、加奈子は「もしかしたら、理子ちゃんには、あの人の知らないところがあるのかな」と語る。これをきっかけに、故人の人生を通して、家族というもののあり方を改めて見つめ直すことになる。物語は、世界一迷惑な兄の死をきっかけに、残された家族が直面する葛藤と、4日間のてんてこまいな後始末の日々を描く。
■ 感想
予告編で興味を抱き、幸運にも試写会に当たったので、一足早く本作を鑑賞させていただきました。ユーモラスな演出を随所に散りばめながら、家族について改めて考えさせる素敵な作品で、なかなかおもしろかったです。
特に印象的だったのは、主人公・理子の心の変化です。幼い頃は兄を慕いつつも、どこかで嫉妬心を抱き、大人になってからは自由奔放で無責任な兄を遠ざけていた彼女が、少しずつ兄への見方を変えていく様が、じわりと胸に染み渡ります。兄の元妻・加奈子と時間を過ごす中で、自分の知らなかった兄の一面を知り、いつの間にか心の奥底に埋もれていた兄への深い思慕を思い出していく描写は、非常に心地よかったです。
加奈子もまた、かつて家族4人で過ごした幸せな日々を思い出し、息子・良一と共に新たな出発を決意する姿が丁寧に描かれており、家族の再生を感じさせます。満島ひかりさんの熱演は、その感情の機微を見事に表現しており、涙を誘います。それを際立たせているのが、良一役の味元耀大くんの演技です。悲しみや自責の念から心を閉ざしていた良一が少しずつ心を開いていく様を、ほんのわずかな表情の変化で見事に表現しています。
家族の死を扱いながらも、ユーモラスな描写とオダギリジョーさんの軽妙な演技で、必要以上に暗く重い話にしていないのは好感がもてます。ただ、終盤のアパートでの邂逅シーンはちょっとファンタジックでくどかったので、あそこは良一だけで十分だったように思います。
ともあれ、「家族とは支えであり呪縛ではない」という言葉が印象的な心温まる作品でした。奇跡的な絆で結ばれた家族の大切さを改めて感じさせてくれます。
前半ちょいイラ、後半ほっこり たまにクスッと
試写会にて拝見いたしました。
ちゃらんぽらんな兄役はさすがオダジョー、宛て書きかと思うくらいドンピシャでした。
対する妹役が主人公となる柴咲コウさんですが、兄が濃い目のため、比較的薄味のキャラ設定。
ポスタービジュアルの感じから、もっとコメディコメディした笑える展開なのかと思ってましたが、どちらかというとハートウォーミングな感動できる作品でした。
コメディパートも適度に散らされており、感動一辺倒で疲れすぎないようにいい塩梅のバランスになっていたと思います。
劇中、「自分にとって家族とはどういう存在なのか?」という問いに対して、家族とは?で詰まってしまう主人公が印象的。
嫌ってきたはずの兄の、自分の知らなかった事や知ろうとしなかった事、遠ざけて会話をしなかった事に対する後悔。
劇中、不破万作さん演じる大家さんが、「死んじゃったら何も言えないもんな」というパートがありましたが、まさにその通りですね…
しかし、主人公が住む佐賀から仙台までの移動、さすがに新幹線は辛くないですか?
帰りはひとくだりあるので必然性がありましたが、陸路で行くの?って思っちゃいました
ちょっと泣く 家族を考える映画
試写会にて鑑賞。コメディかなと思ったらそんなにコメディでもない。兄が苦手だった妹が、4日間淡々と片づけていく話。
途中までなぜか中谷美紀さんの感じでみていた。中盤、柴咲コウさんだわ。と気づく。
柴咲コウさんの兄を見る能面みたいな演技大好き。
わかる、わかるよー。自分も兄が苦手だから。そういう顔になるよね。
何カ所かちょっと泣く。離婚経験ある人や男児育ててる人は特にちょっと泣いちゃうだろうなってシーンがある。
個人的に一番のキーパーソンは満島ひかりさんだと思う。この映画にとってすごく重要な役どころだった。満島ひかりさんの演技はすごく泣かせに来るし良かった。
家族とは、と考える映画だった。兄がいなくなったら、自分はどう思うだろうか。淡々と、片づけることができるだろうか。さみしさがあるのだろうか。虚しさが勝つんだろうか。
99%嫌いな人でも、いざ亡くなると1%のいい記憶が出てきちゃうのなんでだろうね。
また、故人が残していったものは、人それぞれ違うのだと思った。
ある人の見ている故人の顔と、ある人の見ている故人の顔は、違う。
人間は100面体のサイコロだと思う。
自分が見ている面は1面に過ぎないと思う。
自分の知らない顔がたくさんあると思う。
自分は兄とは大人になった今も仲が悪いが、兄の奥さんには私の知らない優しい顔を見せてくれているなら、兄が自分以外の人にいい顔を見せているなら、自分は救われる部分がある、その兄の自分の知らなかった顔を認めたいと思う。それが兄の人生と思う。
いや生きてるけど。
やきそば後ろから見ているシーンが好き。じゅ~って。わくわくするよね。
そんな父への思い残してもらって、よかったね。
めだって面白い!という映画じゃないけど、心のどこかに入って心のどこかにいる映画。
試写会で鑑賞。予告で厄介者の兄のイメージがあったが、厄介者ではある...
「兄の終い」
兄を持ち運べるサイズに
試写会にて鑑賞
ふざけたクズ男を演じさせたらNo.1のオダギリジョー様
さていかに
どんなクズ兄を演じてくださるのか
村井理子さんご本人の実体験を映画館されたもの
柴咲コウ演じる主人公の理子は
絶縁状態だった兄の訃報を
突然東北の警察署から電話で聞かされる
遺体を引き取るように促される理子だが
嘘つきでだらしがなく、身勝手で、
息子の良一をもだしにして金をせびるような兄に
恨みのようなものすら感じていた理子は
さっさと兄を持ち運べるサイズにしてしまおう
と、
兄の遺体を引き取りに遠方から向かう
そこで満島ひかり演じる兄の元嫁かなことかなこの娘麻里奈とともに、
兄のゴミ屋敷と化したアパートを片付けることに
最初こそ
兄への恨み辛みを愚痴りながら事を進めていくが、かなこや麻里奈と接しながら、兄の部屋に遺されたもの、兄を知る人の話から、自分の知らない兄を知ることとなる
やがて
ろくでなしだと思っていた兄は、嘘つきではなくいつでも最初は本気で、結果的に嘘をついたことになってしまうだけなのを気付かされ、人にはない優しさを持つ人だったことを思いだした
結果的に
あまり幸せと思えない最期を、迎えてしまったと思っていたが、そうではなく兄なりの優しさが満ちていたことを、そして家族というものがこんなにかけがえのないものだということを、思い知った理子だった
なかなかユニークで面白い映画
かなり涙腺が弱い私でも
じんわりくるぐらいで
そう泣けるような映画ではなかったなと思ったのだが、
入場特典のティッシュの裏に、原作者村井理子さんのエッセイ?が書かれていて
それを読んだらめちゃくちゃじんわり来てしまった
まさに「兄の終い」がしっくり来る
ふざけたクズ男だけど不器用な優しさを持つ男を演じさせたらNo. 1のオダギリジョー様です
オダジョーいい味
焼きそばのソースは2種類混ぜて。
理解しきれなくても『持ち運ぶ』こと
奇跡とか劇的な何かとかが起こるでもなく、“家族”“別れ”“再会”という凡そ普遍的なテーマなだけに、しかも「四日間」という短い時間の話ですから、淡々としたものになりそうです。
しかし、根幹がしっかりと現実的であり、それでいてユーモラスで、最高に魅力的な作品に仕上げられています。『兄を“持ち運ぶ”』という強烈な比喩とともに、重くなりがちな部分を軽やかに演出しながらも、しっかりと物語と整合し深みを持たせていると感じました。
物理的な“片づけ”という行為を通して、「兄」の家族四人それぞれの心情、その関係の再構築が描かれるのですが、その心緒の描かれ方が本当に素晴らしく見事でした。
それぞれの息遣いが聞こえてくるように生々しくて、全く無理がなく、機微がうかがえ、葛藤や矛盾もちゃんと伝わってきました。
それには、登場人物の感情を説明し過ぎず、関係性を断定し過ぎていないことが重要だと感じました。映像的にも沈黙だったり間だったり、そういう余白というものが丁寧に演出されています。
簡単には整理しきれない感情だったり、綺麗な事だけではない人生だったり、“わからない”を肯定してちゃんと“向き合おう”とする誠実さだと思います。
そういう余白は、観客の感情が入り込むスペースでもあり、私たちが自身の「家族」や「思い出」や「死(後)」を思い浮かべることが自然と出来るように思います。
家族のことを完全に理解することなんて無理で、でも、理解しきれなくても『持ち運ぶ』ことが大切なのでしょう。
おもひでぽろぽろ
試写会で鑑賞。
急逝した“ダメ兄”を偲びながら、後始末に奮闘する5日間。作家・村井理子さんのノンフィクションエッセイ『兄の終い』がベースです。
ちょっとだけ涙した場面もありましたが、終盤の「あなたにも見えるよ」のような演出に違和感があり、一気に冷めてしまいました。
映画鑑賞後に、原作エッセイ『兄の終い』を読みました。映像の記憶がまだ鮮明だったため、情景が浮かびやすく、2時間もかからず読み終えました。
エッセイの方はノンフィクションなので違和感が全くなく、でも自然に涙が溢れました。
好みの問題とは思いますが、映画で加えられた演出はかなり不自然に感じました。原作にある脳内イメージを映像化するだけに留めて、あとは観客の想像に委ねた方がよかったように思います。
家族の愛に感動します。
また11月にも鑑賞したいと思います
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