「心温まる」兄を持ち運べるサイズに Dickさんの映画レビュー(感想・評価)
心温まる
1.はじめに:中野量太監督との相性
❶中野量太の長編監督作品中、本作を含め5本が名古屋で劇場公開されていて、全作をリアルタイムで観ている。他に他地区の一部単館と配信のみが1本(下記②)あるが、未見である。
❷マイ評価は下記の通り。ベストが③。本作は5番目。全体の相性は「上」。
❸5本に共通することは、主人公又は関係者の家族の死に関わる深刻な内容を、笑いとユーモアのオブラートで包んでいるにも関わらず深い感動をもたらすと言う、ユニークな作風にあると言える。それは中野監督の優しさのある人間味であると思う。
①『チチを撮りに (2012)』 74分、監督/脚本、公開年月2013.02、♥2013.02鑑賞98点。
②『沈まない三つの家(2013)』 69分、監督/脚本、公開年月2013.10(一部の単館と配信のみ)、未鑑賞。
③『湯を沸かすほどの熱い愛 (2016)』 125分、監督/脚本、公開年月2016.10、♥ 2016.11鑑賞100点。♥2017.08リピート100点。
④『長いお別れ(2019)』 127分、公開年月2019.05、♥2019.05鑑賞98点。
⑤『浅田家!(2019)』 127分、公開年月2020.10、♥2020.10鑑賞85点。
⑥本作『兄を持ち運べるサイズに』 127分。公開年月2025.11、♥2025.12鑑賞80点。
2.マイレビュー
❶相性:上。
❷時代と舞台(登場する文書やテロップや会話等の日付から):
①2019年:滋賀県⇒宮城県多賀城市。
②40年前(1970年代)の愛知県。
★多賀城市は、現役時代出張で何度も訪れているので、親しみを感じた。
❹主な登場人物
①村井理子(りこ)(柴咲コウ):
主人公。滋賀県在住の翻訳家・エッセイスト。夫と2人の息子がいる。何年も会っていない兄が死んだという知らせを受け、多賀城市に向かう。そこで7年ぶりに兄の元妻・加奈子と、その娘・満里奈と再会し、協力して兄の死後の処理を行う。その4日間の体験を本にして、それが原作になっている。
②兄(オダギリジョー):
理子の兄。多賀城在住。マイペースで自分勝手、いつも家族を振り回し、妹に金の無心をしてくる迷惑なダメ人間。でも心根は優しく、人当たりの良い憎み切れない性格。2度結婚して2度離婚した。母が癌だとわかると、東北に転居し、母を捨てた。2019年、アパートで脳内出血で死亡。病気で生活保護を受けていた兄のアパートはゴミ屋敷同然だった。その部屋には理子の本が並んでいた。死後の処理中の理子の前に亡霊として数回登場する。
③加奈子(満島ひかり):
兄の元妻。豊橋在住。娘(同居)と息子(兄と同居)がいる。兄を愛しているのに離婚したのは主に経済的理由による。息子の親権を兄にしたのは、それが離婚の条件だったため。理子と協力して、元夫の死後の処理を行う。
④満里奈(青山姫乃):
兄と加奈子の娘で中学生。離婚後は加奈子と暮らす。
⑤良一(味元耀大):
兄と加奈子の息子で小学生。離婚後は兄と暮らしていた。兄(父)の死後は児童養護施設を経て加奈子に引き取られる。
⑥大家(不破万作):
兄のアパートの大家。
❺まとめ
①タイトルにある「運べるサイズ」とは「遺骨」のことだったが、「心の中に留めおいて、何時何処でも思い出す」意味もあると思う。
②おんぼろアパートで孤独死した兄は、人生の敗残者だったかも知れないが、迷惑をこうむってきた妹の理子や、元妻の加奈子や、そして我々観客の胸には、彼なりに「懸命に生きた優しく愛すべき人」として記憶されることになった。心温まる内容である。
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