劇場公開日 2025年11月28日

「愛しているのに憎む複雑な心理」兄を持ち運べるサイズに kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 愛しているのに憎む複雑な心理

2025年12月16日
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鑑賞方法:映画館

絶縁していた兄が亡くなったという突然の知らせ。兄妹が決別することになったエピソードから語られていく始まり方。人たらしのクズを演じさせたらオダギリジョーに勝てる俳優なんていない。なんてやつ!と思わせるシーンが続く。主人公理子が絶縁しているが故に冷たい反応を示すのだが、彼女の2人の息子や夫の反応が普通だよなと思わせる。
原作のエッセイは未読だからわからないが、たびたび登場する兄は映画オリジナルと思われる。この想像の兄、兄の妻、兄の子どもと話しながら、兄とのエピソードを思い出していく流れ、湯沸かし器、ピアノ、といった金を無心してきたメールについてもなんとなくの答えが提示される。それぞれのその後が提示されて、前向きないい終わり方だった。始まりのシーンに収束していく感じも好きだ。
少し違和感を感じたのは、兄が離婚して、息子を連れて東北に移住したことについて明確な理由は語られないこと。震災が関係しているのか。震災を受けて再生しようとする地域の姿を自分に重ねていたのかなと想像したりする。いろんなことを器用にこなすが、どれも長続きしない兄。彼にとってはいろいろと生きづらい世の中だったのかもしれない。
愛しているのに憎む。そんな複雑な感情は、裏切られたりしながらも愛する気持ちを拭うことができないときに起こるんだよな。相手に対する愛情の深さとも関連性があるか。妹も妻もやはり彼を愛することがやめられずにいたってこと。人たらしのダメ男が築いた家族の絆が残っていく話だと考えれば納得がいく。泣けるわけではないが、いい話だったなとは思える映画だった。

kenshuchu
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