「それぞれの価値観とそれぞれの感じ方、そして人と関わり変わること」兄を持ち運べるサイズに kai-sakさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの価値観とそれぞれの感じ方、そして人と関わり変わること
いい映画でした。生前はわがままで身勝手、金をせびるだけの兄。訃報を受け、行ってみるとゴミ屋敷状態の部屋。腹の立つことばかりだけど、後始末をしながら、加奈子の言葉で兄の人生を振り返ってみると、そこには違う兄がいた。僕たちは先入観や決めつけでついつい人を判断したり、自分の考えに固執したりする。でも、違った目線で、違った角度で見直すとまた別の事実に気がつくこともある。そんな心の柔らかさを感じる映画だった。今の世の中、他人の意見を聞かず我を通す人、自分と違った意見を持った人を誹謗中傷する人…排外的な人たちや意見が多い。でも、自分が間違いないと信じることも実は一面的な見方であるかもしれないことを忘れてはいけない。
そんな気持ちで兄の人生をたどってみると、気づかなかったことに気づき、別の兄に出会うことができた。金をせびり、どうしようもない兄も現実かもしれないけど、そうでない兄もいたことが大事。それに気がつくと、とんでもないメールが愛おしくなってくる。温かい気持ちになる映画だった。
原作は読んでいませんが、映像でしか表現できない部分があって、映画の良さを感じさせてくれる作品だった。言葉の表現ではしづらいことも、映像で感じさせることによって、心に染み入ることはよくある。この映画もそんな感じがした。いきなり東北に行ってしまう、ピアノ、湯沸かし器、募金…特によかったのが、終わり近くのシーンで、きれいに片付けた兄のアパートで、自分の一番好きな兄にそれぞれが会いに行く場面。三人が並んで、どうぞみたいな、そのシーンが温かくて、そしてアパートのドアがまるでタイムマシンの入り口か、どこでもドアみたいに感じられ、それぞれが兄をどう受け止めているかが伝わり、自分としては印象に残るワンシーンでした。
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