「驚異的な成果を出した無邪気な猪突猛進」キムズビデオ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
驚異的な成果を出した無邪気な猪突猛進
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キムズビデオという伝説のビデオ屋にまつわる数奇な物語は非常に面白いし、面白がるだけではいられない切実さでキムズビデオのライブラリー救出を成し遂げた監督たちの行動力と情熱には心から感服する。のだが、ドキュメンタリーとしては、キムズビデオのライブラリーがどれだけの価値があるものかを検証したり、キムさんの謎の素性を掘り下げたり、あまりにもバカバカしいシチリアの事情を俯瞰的に捉えることより、映画オタクの自己実現が優先されていて、とても個人的なドキュメンタリーだと思えばそのアプローチもありなのだが、どうしても作り手がテンション上がってヒャッハーとなってる感じが、言葉を選ばずにいうとどうしても鼻につく。これはフィクションですよという体のビデオ奪還作戦のくだりも、そこはハイストムービーとして面白そうに撮ってくれないと映画そのものへのオマージュにならないと思うのだが、残念ながら致命的に面白くない。まあ、それだけ無分別に猪突猛進ができたからこそあのライブラリーを救えたのかもしれないので、手段を選ばず成果を出すことの必要性という点で、とても貴重なサンプルケースではある。
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