劇場公開日 2025年8月8日

「映画だと痛快、現実だと狂人」キムズビデオ おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 映画だと痛快、現実だと狂人

2025年8月17日
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いつもは映画を観る前にあらすじをチェック。
しかし、今回は見忘れて鑑賞。
結果的には、それが功を奏した。

事前の知識は「ニューヨークの有名なレンタルビデオ店が、配信が主流の世の中になり閉店し、そこにあった大量のレアなビデオの行方を追う」という程度だった。

正直、個人的には前半は少し退屈に感じた。
しかし、終盤の予想外の展開には度肝を抜かれ、そこから一気に物語に引き込まれていった。

前半は、昔の名作映画の映像とともに、監督が「映画例え」のナレーションを畳みかけ。
おそらく古参の映画ファンは狂喜乱舞するような内容なのだろう。
ただ、私は2011年から突然年間100本以上映画館で鑑賞するようになったファンなので(しかも家ではあまり観ない)、昔の映画の知識が乏しく、正直、ポカーンとしてしまう場面が多かった。

それでも、前半で特に心に残った場面が2つある。

1つ目は、監督がキムズビデオのコレクションが保管されている建物に忍び込み、警報器が鳴り出したため必死に走って立ち去ろうとする場面。
その映像を観て、『電波少年』のことを思い出した。

もう1つは、キムズビデオのコレクションの保存方法が杜撰であることを知ったキムさんが、イタリアの政治家たちと話し合う場面。
キムさんは怒り心頭であるにもかかわらず、感情を抑えて冷静に諭すように話していた。
しかし、政治家たちは、言葉が通じないのをいいことに、現地の人間の間で舐めた会話をしていた。
これを見て、腐敗した政治家は日本だけではないことを知った。

中盤、2012年公開の映画『アルゴ』の映像が流れ、「この映画なら知っている」と思った。
その直後、監督がナレーションで耳を疑うようなことを語り、その後、まさかの有言実行する展開に釘付けになってしまった。
映画の中ならいくらでも観てきた場面だが、現実でそれを実行するのは狂気の沙汰だと、普通の人は思うはず。
まさかそれを現実に行う場面を観ることになるとは想像もしておらず、とても興奮した。

その後の、監督がキムさんに報告する場面も印象的。
キムさんがどのような対応を見せるのか興味深かった。
しかし、冷静に考えれば、キムさんもキムズビデオの経営で法を無視していたことを考えると、監督の味方をするのは当然のことに思えた。

おきらく