忘星のヴァリシア 第二章 群青のレビュー・感想・評価
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連星の詩
第一章から続けての鑑賞。
今作は今年の作品なのでどのくらいレベルアップしているんだろうと思って観ていたらとんでもないくらいクオリティが上がっていて驚きました。
前作からの流れで卒業式をサボった明桜と彩希の駄弁っている様子から始まり、そこから爽やかなOPが流れてきて期待値がぐっと上がりましたし、何気ない日常の中に忍び寄る非日常のバランスが絶妙で唸りました。
スタッフ紹介の欄がほとんど監督の名前だったので、全部俺状態でイカつかったです。
前作では多くの登場人物を抱えての群像劇の面が強く、中盤から終盤にかけて明桜と彩希の関係性を早足で深掘りしていったのでカタルシスが少し足りなかったのですが、今作は最初から最後まで2人にフォーカスを当ててくれており、このシリーズの代名詞であるロボット×百合の面もガッツリやってくれるので満足度が高かったです。
日常描写にも力が入っており、同級生たちと海に行く約束をして水着を買いに行ったり、陸上部の応援に行ったりと微笑ましい様子がたくさん出てきますし、そんな中で海に入るのは避けた方がいいという選ばれたもの故の宿命も同時進行で描いていたりとで隙がないです。
惑星の運命からのメッセージなんかも絶対に最終章に繋がっていくんだろうなという重みも感じられますし、1章では唐突な登場だったが故に飲み込みにくかったキャラクターも最初からじわじわ登場してくれるおかげでなるほどなと納得がいきました。
詩織と山辺との関係性もこれまた素敵で、誰かを好きになったことのある経験があるがために悩む詩織とそれがないがために悩む山辺が出陣する明桜と彩希を憂うという展開も沁みてきます。
インソムニアとの戦いも大迫力で、よりパワーアップしたヴァリシアと共に全てをかけてぶつかっていく様子がとても良いですし、振り切ってるからこそ待ち受ける運命がどんなものになるのか気になる終わり方だったのもとても良かったです。
作画面も前作からのキャラクターの良さを活かしつつ、キャラクターもよく動きますし風景なんかもよく動き、ヴァリシアなんかとんでもない勢いで動いていきますしで迫力満点でした。
前作の課題だなと思った横顔の描写も少し違和感はあれどかなり改善されていましたし、何よりキャラクターの表情がより豊かになっていたのが最高でした。
音楽もグッとパワーアップしており、より戦闘シーンの臨場感を感じられるものになっていました。
迫り来る最終章は2年後を予定とのこと。
これは応援せねばと観終わった後にクラファンに出資しました。
アンコール上映もあるとのことで、深掘りしたいからもう一回観に行きたいなとなりました。
アニメはやっぱり最高だなと。
鑑賞日 6/9
鑑賞時間 17:30〜18:45(第一章 却火と同時上映)
監督は少年の心を持っている
新海誠ではなく(足して)庵野秀明になれるか
第一章と続けてトリウッドで鑑賞、満席回。
青春真っ盛りの夏を舞台に、恋愛模様が深く描かれる。良い意味でのハッタリや、作画と美術の密度も格段に増し、40分超えでもダレがない。
二昔ほど前のアニメ、特に1クールのテレビ作品や数話構成のOVAの面影を感じる。
前作からの変化としては00年代のシャフト作品のような、あえてキャラクターの表情を見せない演出とシンプルな背景美術(ここは手描きではなく3Dか)のカットがマッチしている。自主制作で監督の一人作画に、丁寧な作画(ufoや京アニのような)は期待できず、また背景美術やエフェクトにこだわる綺麗目の画作りを期待すると、期待外れだろう。しかし「自分のやりたいことを好き放題にやる」実力を、個人で手に入れつつあるのがやはり驚き。肝心の脚本の内容も最後まで気持ちが良く、シリーズ2作目として格段の進歩が感じられた。
トリウッドで個人制作の若手監督なら、新海誠フォロワーである前提で「ほしのこえ」的なごく私的なフィルムか、もしくは「君の名は。」以降の「優等生的な・収まりのよい」作品を作ってくるのだろうと、良くも悪くも予想していた。一方、2本立て75分という長さの時点で矛盾があり、期待半分不安半分だった。
個人的にこの監督は、「ほしのこえ」から「秒速5センチメートル」を作っていく新海監督のようには見えない。むしろDAICON FILMから「王立宇宙軍」を作るガイナックスのような無鉄砲さ・破天荒な気質を感じる。また、観客の質問への監督らの反応からしても「レヴュースタァライト」の古川知宏監督フォロワーには違いない(※古川監督もエヴァ世代だが本作の監督はまだ25歳)。
だとすると比良坂新は、新海誠ではなく未来の庵野秀明になり得る逸材なのか?
技量以前に、世代に染みついたオタク性の点で荷が重いか……。それでも一人のアニメで板野サーカスをやってのける時点で十分に年不相応と言える。監督よりも本編について語りたがる、まさに古いオタクな配給会社の社長(しかしお若い)がいる程度には、やはり作品が伝える力は本物だと微笑ましかった。
若き才能ある監督が根性で作った映画を、妙齢のプロデューサーがどう世に問うか、最終章も二人三脚を見守りたい。
※余談
「ロボットアニメ主人公を少女がやってのける時代」は商業に限らずアニメ全体の意識として出てきつつあるのかもしれない、とも有意義な気づきがあった。百合ジャンルへの期待も高まる1本だった。
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