「「ふつうの子供たち」の見事な肖像画」ふつうの子ども penさんの映画レビュー(感想・評価)
「ふつうの子供たち」の見事な肖像画
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マンションのエレベーターに乗って下りる唯士の顔の存在感!その顔を極端な背景ぼかしとソフトフォーカス気味のアップでとらえたキャメラは、そのまますべるように、学校に向かって走り出す唯士とともに走りだし、そして陽光きらめくなか、あいさつをかわしながら追い抜いてくる女子の同級生をとらえます。まるで競走馬のように朝の光の中を走り抜けるこどもたちのその姿がなんともよい。この冒頭数分の映像の躍動感が、まずもって目を見張るほど素晴らしいと思いました。
ヴィムベンダース監督の確か「都会のアリス」でしたか、自転車に乗って移動するこども達をとらえたみずみずしい映像があって感銘を受けた記憶がありますが、それ以来の体験でした。そして、この子供特有の躍動感が、なんと冒頭から最後まで、転がるように途切れず、持続するのです。
なぜだろう?(以下ネタバレあり)
ただ可愛いだけ、天使みたいなあどけなさを強調するようなだけの演出だったら、多分こうならなかっただろうなと思いますが、この作品では子供の心の中にあるある意味ドロドロした側面もちゃんと見せていくのです。そして環境テロに至っては、それが自分たちの世代に害を及ぼす大人社会に対する信念のように見えて、実はそれぞれが抱える、子供らしく素直で切実な自身の問題に由来するものであることが、おとなたちとの会話のなかで、見えてくるに至って、「ふつうの子ども」の、生き生きとした生の姿の肖像が鮮明に浮き彫りになっているように思えました。
素晴らしい作品でした。
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