「子供たちへの演出力はマジックのよう」ふつうの子ども 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
子供たちへの演出力はマジックのよう
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冒頭、主役の男の子の顔をアップで捉えた長回しショットだけで、写し取った表情や仕草から、男の子のキャラクターが浮かび上がる。その後の作文発表のシーンでは、発表者や作文の内容だけでなく、教室内の子供たちのリアクションのナチュラルさに驚く。
カメラの存在を全く感じさせない子供たちの演技をどうやって引き出したのか。呉美保監督の子供たちへの演出力はマジックのよう。
主人公は環境問題に意識の高い同級生の女の子に魅かれ、いじめっ子の男の子も加わった3人で、悪戯のように抗議活動を始める。作中にも出てくるグレタ・トゥンベリや「環境テロ」に着想したのは明らかだが、段々とエスカレートしていくさまは、それらを揶揄しようとしているように見えて、結構際どいところ。
しかし、事が明らかになった後の保護者が揃ったシーンで、女の子が環境問題にのめり込んだ本当の動機らしきものが分かる。ここでの瀧内公美の毒親ぶりが上手くて凄い。そして主人公も本当の動機を涙ながらに話す。ハンカチを渡そうとする母親の手を払いのける姿には、グッときた。誰かの子供から一人の人間になる瞬間を見たような…
もっとシリアスになり得る題材ながら、自然光を生かした柔らかな色調で、コミカルタッチをベースに描いているので、後味は良い。エンドロールの子供たちの顔写真や優しい音楽も良い。
メインの子供3人それぞれ持ち味があって良かったが、主役の男の子に好意を抱いているらしい女の子のコミカルさが微笑ましかった。
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