シカゴ : インタビュー
ブロードウェイの傑作を映画化し、アカデミー賞に12部門13ノミネート。作品賞を含む本年度最多の6部門を受賞した「シカゴ」。何かとリスクの多いミュージカルというジャンルで、見事にオスカー獲得を成し遂げた本作の監督は、近年、活躍が目覚ましい舞台畑出身者の1人、ロブ・マーシャル。そして、見事な歌と踊りを披露して我々を魅了する“歌姫”キャサリン・ゼタ=ジョーンズとレニー・ゼルウィガー。「シカゴ」を観る上で欠かせない注目人物3名に、渡辺麻紀氏がインタビュー。成功の秘訣はどこに?(聞き手:渡辺麻紀)
ロブ・マーシャル監督、キャサリン、レニー直撃インタビュー
■ロブ・マーシャル
実は「シカゴ」の映画化は、舞台が始まってすぐ、75年から話題になっていた。
「そのときのキャスティングはゴールディ・ホーンとライザ・ミネリだったんだ。でも、オリジナルの舞台にはほとんどストーリーがなく、ナンバーは観客に向けて歌われる構成になっていて、数多の映画化されたミュージカルとはまったくちがうんだ。多くの人が、このスタイルを伝統的なミュージカルのものにしようとしたが、それが難しくて……」
「シカゴ」映画化までの長い道程を語るのは、それをモノにした監督ロブ・マーシャル。そこで彼が提案したのは「ミュージカルのハイブリット」だという。
「つまり、舞台と映画が出会うというスタイルを提案したんだ。映画を見てもらえばわかるけど、歌と踊りは映画のなかでも<舞台>の上で繰り広げられているんだよ。ミュージカル・シーンはシュールなものにして現実と区別し、物語を伝えることにしたんだ」
次に問題になるのはキャスティング。「悲しいことに、ミュージカルはリスキーなビジネス」なのでスターの起用を考え、リチャード・ギア、レニー、そしてキャサリンを採用とした語る。
「そこで問題になるのが、彼らが果たして歌い踊れるのか、だ。私としては、歌を吹き替え、踊りを代役に任せることは絶対したくなかったからね。しかし、幸いなことにリチャードはミュージカルの経験があって、しかも本人もとてもラブリーな人間だった。キャサリンは、ちゃんとミュージカルをやりたいと表明していたし、彼女のタップダンスと歌のビデオを見て、確認出来た。問題はレニーの役で、彼女に行き着くまで10人ほどのトップ女優に会ったよ。名前は言わないけどね(笑)。でも、私はずっとレニーが気になっていて、彼女のコメディセンスと繊細さ、演技力がほしかったんだ。そこで彼女にステップと歌をやってもらい、彼女こそロキシーだと確信したんだ。歌声はナチュラルで美しく、サウンド的にはビリー・ホリディのような感じ。体操の経験があったので、ダンスの基本は出来ていたしね」
ビリー・ホリディの名前が登場するとは思わなかったが、それほど彼女に惚れてしまったのだろう。レニーも「ロブは最高! 彼のためなら何でもするわ!」と手放しの褒めよう。だが、この相思相愛ぶりが映画作りに与えた影響は大きく、現場は素晴らしい雰囲気に包まれたと嬉しそうに語る。
「誰もがチャレンジを承知で参加してくれたし、誰もがエキサイトしていたよ。6週間のリハーサルで仲間意識も育まれ、撮影開始のときは、まさにビューティフルな状況になっていたんだ。リチャードが自分のナンバーを撮影しているときにレニーが訪れ、クィーン・ラティファが見に来ると言ったふうに、みんな出番がなくても集まってくるんだよ。これは僕の初の劇場映画だが、あまりに素晴らしい経験をし過ぎて、甘やかされたかもしれない。とにかく、それほど幸せだったんだよ」