「人が死ぬと泣く」ルノワール とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
人が死ぬと泣く
言葉にできないから映画を作る早川千絵監督と「死」、そして主演・鈴木唯の輝き。"みなし子になってみたい"…?勝手に親を殺すな。夢っぽくなくあくまで地続きな形で、観客が何が起こっているか分からないシーン頭の編集。近未来の次は私的要素のある過去、前作『PLAN 75』よりも余白のある作り。世の中に溢れた「死」を扱った作品には辟易とさせられることもあるが、監督の作品にはしっかりと引き込まれるし立ち消えていく生命の儚さと力強さその両面を捉えるような説得力がある。
ふっと消え入りそうな、ブラックホールみたいな穴に落ちてしまいそうな夢か妄想か分からない曖昧さで、感覚に何かを訴えかけてくる。自分が子どもの頃に想像力たくましい子どもで、住宅街の中に「こんなすごい公園がある!!」と遊園地みたいな公園がある(その公園のイメージは今でも自分の中にふんわりと残っている)と友だちに嘘をついて親に怒られたような記憶もあるが、それって本人=当時の自分にとっては嘘でなくあくまでリアルなもの。あの頃、ぼくらが見てた景色とその多感な頃の感覚を思い出してしまうよ。ひさしぶり!
泣くのは悲しいから?当てるゲーム。ショッキングな冒頭からの父の入院以降、超自然的なものに惹かれ興味津々。母の不機嫌ムーブに突然の河合優実、死に群がる胡散臭い詐欺商売など一見脈絡のない全てのキャラクター描写に、引いて見たとき何が見えるか印象派。川、馬、テレビ、そして伝言ダイヤル…。途中息苦しくなりそうなほど観るのがつらくて、最後は鳥肌。完璧なラストと余韻が、自分好みだからとかそういうの抜きにしても、胸に残る。"人生は素晴らしい"のだと、こんな世の中では戯言に響く言葉も少しでもそう思わせてくれるような映画の魔法がそこには確かにあった。
勝手に関連作品『アマンダと僕』『悲しみに、こんにちは』『ポネット』『お引越し』『幻の光』
P.S. 多国籍な映画製作で旅する映画作り。フランスで編集、シンガポールでサウンドデザイン、フィリピンで船。