「原題が意味する復活のように初代を復活させた傑作」ジュラシック・ワールド 復活の大地 さとちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
原題が意味する復活のように初代を復活させた傑作
これは2025年に1993年公開の初代を「再公開」させた1作であると表現できる。
既存ファンが楽しめる要素やオマージュ、展開が随所にあり、シリーズを通して見てきたファンほど楽しめるだろう。
第一作重視で作られているので、スリリング、死亡退場が結構あって新規ファンは慣れない可能性あり。
でも理解しやすい展開なのであまり考えなくても楽しめるので開口は広い作品であると感じる。
※以下未視聴の方はご注意あれ。
1.新章の幕開けに伴う新要素&期待とシリーズの魅力部分を融合させた作風
1-1 恐竜がテーマということは大自然が舞台であり、本作においても手つかずの自然が数多く残る場所がロケーションに選ばれている。
そこに生きる恐竜たちの姿は最新の映像技術で描かれ、ティラノサウルスに至っては新たに「泳ぐ」シーンが追加された。
地上でも速く、水中でも速いという3のスピノサウルスのように水陸両用になった"王"は新たな脅威として新規視聴者は勿論、既存ファンにも新しい印象を植え付けるものとなった。
しかしそんなシリーズの「看板」の本作最初の登場シーンは意外や意外、腹を空に向けて寝転がりながらの登場であったのだw
しかしそんな無防備な姿でも、いつ目を覚ますのかと恐ろしさを抱かせるシーン展開になっているのは過去作をしっかり踏襲している部分でもあるから評価対象にすることが可能になっている。
1-2 巨匠ジョン・ウィリアムズのあのテーマが印象的な要所要所の場面で顔をのぞかせている。
とりわけ本作で初登場となったティタノサウルスの群れが地平線に向かって歩いていくシーンでお馴染みのフレーズが高らかに鳴り響いた瞬間は、「ようこそジュラシックパークへ」とハモンド社長がいった場面と同じ感動を現代に蘇らせたといっても過言ではない完成度なので、これはぜひ劇場で観ていただきたい!自分はここで自然と涙した。
2.シリーズファンにこれでもかと懐かしさを思い起こさせるシーンの数々
本作は過去作のオマージュや場面が随所にちりばめられており、とりわけパーク3部作をよく見ているファンにとっては「あー。この場面はあのシーンだ!」と気づくことが多くあるだろう。
自分が気付いた場面としては
2-1 中盤で家族がティラノに襲われるシーン
急流でのシーンだったことから3でグラント博士一行がプテラノドンに襲われる(と言っても川で主に襲われたのはビリーだけども)を彷彿とさせる感じがあった。
あのしつこさは絶対に意識してるだろう
2-2 最後のサンプルを採取するために断崖絶壁をロープで降りる一連のシーン
ここは一作目でグラント博士とティムがティラノから逃れるために2人で降りて行ったシーンや二作目でマルコム博士一行が同じく断崖絶壁でピンチに陥るシーンを思わせた。
2-3 終盤付近で新登場の恐竜と家族の逃走シーン
これはもう一作目でレックスとティムがヴェロキラプトルに追いかけられるシーンに他ならない!
店の棚の下からのアングルでその恐竜がゲータレード?を踏みつけるシーンが映ったときに、一作目で厨房?の床を爪でコツコツとやっているヴェロキラプトルの足だけが映るシーンがオーバーラップすることは間違いない。
そしてその後の床下ダクトを進んでいくシーンも一作目で「天井裏」に入っていった展開を思い出さずにはいられなかった。
2-4 ダンカンが終盤に発煙筒でDレックスを引き付けるシーン
これも一作目を見ているファンには説明はいらないはず
2-5ラストの黄昏る大海原へと脱出艇が向かっていくシーン
これも一作目を見ている(ry
しかし、これらのシーンはいずれも新しい要素や展開と絡めつつ消化されているので、既視感が自然と湧いてこず、「焼きなおし」という印象を抱かせない塩梅になっているのが実に絶妙だということができる。
他にも監督がギャレゴジこと2014ゴジラを監督したギャレス・エドワーズが監督ということもあって、序盤でインジェン社の研究施設で一従業員のポカから引き起こされた事故で一人が死亡退場。(その人物の自業自得だったとはいえ)同僚の女性が絶望しながらの「ごめんなさい」を言うシーンにギャレゴジの原発事故シーンが折り重なるなど、彼の作品を見ているファンへのサービスも忘れない心意気が憎かった。
ただし、マイナス点もないわけではない。
1.新恐竜Dレックスの扱い
ワールドのインドミナスに相当する存在であろうと目される新登場のDレックスであるが、出てくるのは序盤と終盤でいずれも前者はちょろっと、後者もホントの終盤に2,3分ほど登場するのみである。合計時間にすると5分も出ていなかったのではないだろうか?
造形も世界観と乖離したエイリアンのような見た目で、とりわけ出っ張った額の形からこれまたギャレゴジのムートーとかミレゴジのオルガを思わせる姿である。
ワールドのインドミナスがオーウェンらの仲間であるブルーたちを操ったり、擬態能力で不意打ちしたり、Tレックスとブルーの連携で追い詰めてかつモササウルスからの強襲でようやく撃退できたなどボス恐竜として圧倒的カリスマを示していたのに対し、今作のDレックスには全くそれが感じられなかった。
本当にただ出て来ては登場人物たちを襲うだけって感じ。
ぶっちゃけ本作でのDレックスが出てくる場面はそれをTレックスに全部置き換えて考えたとしても物語として全然破綻しないから、存在感がとにかく薄い感じがある。
「Dレックスにしかできないオイシイ場面」というものが本作に全くと言っていいほど書かれていない。それなら新登場の意味なくない?
むしろ目立っていたのは家族をファーストコンタクトで恐怖に陥れたり、サンプルを採取しようとする一行を翻弄しまくったモササウルスとか、そのシーンに便乗するかのごとき形で乗っかて来てダンカンの部下2人を捕食していったスピノサウルスとか、シリーズのもう一人?の顔であるヴェロキラプトルを瞬殺して颯爽と飛び立って行ったり、一行を素早い動きで追い詰めていくミュータドンだった。
兎にも角にも新章の大型恐竜としてはものの見事な「職務放棄」をしているとでもいうべき恐竜になってしまっているのが実にもったいない。次回作以降の活躍の可能性を残した形とも見ることができるのかもしれないが、印象にとにかく残らない以上どうするというのだろう...?
2.ヴェロキラプトルの扱い
シリーズを見てきたファンであればあるほど解せないのが今作におけるヴェロキラプトルの扱いだろう。
第一作から人間サイズの肉食恐竜が実は1番恐ろしいという印象をこれでもかと見せつけ、前作・新たなる支配者までのワールドシリーズにおいてはオーウェンとの絆を中心としてストーリーにおける恐竜陣営の主人公ともいえる立場を築いた人気恐竜だが、本作では新参のミュータドンに強襲されたとは言えどあっさり敗北。
その後は全く出てこずたった30秒ほどで出番終了というまさかの扱い。例のシーンの恐怖をミュータドンに譲るためだったであろうにしても、あんまりな展開と扱いである。
ティラノにはしっかりと見せ場があっただけに余計に引っ掛かった。
新登場恐竜との兼ね合いもあったのかもしれないが、もう少し何とかならなかったものかと感じた点である。
ストーリーに関しては人間のエゴが絡んだシリーズお決りの展開なので、あえて新たに言うことはない。今作がかなりの完成度でかつ手堅くまとまっているので次作へのハードルは上がってしまったわけだが果たしてどうなるのだろうか...
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