「許されざる者」プロフェッショナル レントさんの映画レビュー(感想・評価)
許されざる者
1972年の血の金曜日事件が起きた頃のアイルランド。そのドニゴール州グレンコルムキルを舞台にした、あたかもイーストウッド主演の西部劇「許されざる者」を彷彿させる内容。
かつての第二次大戦にアイルランド人ながらも従軍し、多くの敵兵の命を殺めてきたフィンバーは終戦後妻を失い、孤独な中なおも暗殺者として多くの人の命を殺めてきた。そんな彼も老齢の域に達し引退を決意する。
殺しから足を洗った彼だが、顔なじみの少女が男から虐待を受けていることを知り、彼は自分の「正義」のために男を抹殺する。しかしその男はベルファストで血の金曜日事件を起こしたIRA暫定派のリーダー、デランの弟だった。
弟を殺された彼女はフィンバーをつけ狙う。テロ行為を続ける彼らにとって市民をも巻き込むテロ行為はアイルランドの真の統一を目指すための戦いでありそれは彼らにとっての「正義」だった。そして愛する弟を殺されたデランにとって復讐のための戦いもまた彼女自身の「正義」であった。
殺しに慣れ切っていたフィンバーにとって邪魔な人間を葬り去るのはたやすかった。彼はそれだけ殺しに慣れていてその方法があらゆる難問を解決するのに手っ取り早い方法だった。
初めから法的手段に頼っていれば村を巻き込んでの危機を回避できたはずだが彼には安易な殺しという方法しか思いつかなかったのだ。それが結局は彼の愛する人々を危険にさらすこととなってしまう。自分が犯してきた罪、その罪に浸りきった故に繰り返された過ち。彼はそんな過ちに満ちた人生に終止符を打つために最後の戦いへと向かう。
共に自分が「正義」と信じて犯してきた「罪」。その罪をまるであがなうかのように対決の舞台に臨む両者。その約束の地であるバーで両者が相まみえた時戦いの火ぶたはきって落とされた。
まるでその様はかつて悪事の限りを尽くしてきたイーストウッド演じる無法者のガンマンとたとえ秩序を守るためとはいえ己の正義のために暴君のようなふるまいをするジーン・ハックマン演じる保安官との対決を思わせる。
村で唯一のバーにはフィンバーの顔なじみが揃っていた。そこには友人でもある警察官のビンセントの姿も。
戦いの中でフィンバーはビンセントにその正体を知られてしまう。しかしこの戦いはこのグレンコルムキルでの生活を捨て去る覚悟で臨んだ戦いでありもはや未練はなかった。
銃弾を受け手負いとなったデランがたどり着いたのは懺悔の地である聖コロンバ教会を思わせる建物。そこでフィンバーはまるで懺悔を受け入れるかのように先に逝く彼女を最後まで看取るのだった。
そして彼もまた贖罪のために安住の地であったグレンコラムキルの地を自ら去るのだった。まるで「罪と罰」の主人公ラスコーリニコフのように。
北アイルランド出身者であり、かつてIRA(アイルランド共和軍)のリーダであるマイケル・コリンズを演じたリーアム・ニーソンが今回はそのIRAから分派した過激派組織IRA暫定派を葬り去るという内容はまるで長く続いたアイルランド独立問題に自ら終止符を打つかのような内容でただの西部劇風エンタメ作品とは違う奥深さを感じさせた。
こんばんは。
コメント失礼しますm(__)m
とても説得力のある勉強になるレビューでした。
映画を読む事に長けている、プロフェッショナルなレビューでした。
拝読できて感謝!
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