劇場公開日 2025年4月25日

  • 予告編を見る

「ボリショイ・バレエ団、恐ろしいところ!」JOIKA 美と狂気のバレリーナ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 ボリショイ・バレエ団、恐ろしいところ!

2025年4月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

驚く

予告を目にしなかったのでノーマークの作品だったのですが、上映時間の都合がよかったので、鑑賞してきました。実話ベースということで考えさせられるものがあり、とても勉強になりました。

ストーリーは、ロシアのボリショイ・バレエ団にスカウトされ、入団を夢見てアカデミーで練習に励むアメリカ人のジョイが、すさまじい特訓や厳しい生活管理やライバルたちからの冷たい仕打ちに耐え、みごと入団を果たすものの、希望するような役はもらえず、家庭に安らぎもなく、しだいに精神的に追い詰められていく姿を描くというもの。

どの分野でもその道を極めるのはとても難しく、ましてや世界の頂点に立てる人間なんて本当にごくわずかです。好きで始めたことが仕事になり、プレッシャーになり、足枷や呪いになるケースも珍しくありません。ジョイにとってのバレエはまさにそのようなものだったと思います。

バレエについては無知ですが、ボリショイ・バレエ団という名前は聞いたことがあります。そんな有名なバレエ団を目指すバレリーナだからこそ、過酷な生活に耐えねばならないのはわかりますが、まさかここまでとは思いませんでした。文字通り血が滲むような努力、徹底した自己管理、強靭なメンタルなどが要求され、およそ常人には務まらない世界だとびんびん伝わってきます。

そんな厳しい競争世界に単身飛び込み、バレエ技術だけでなくプロとしての覚悟を決めていくジョイの姿が、ありありと描かれているのがいいです。バレエに全てを捧げる極限の生活は、ジョイの心をどんどん追いつめていったことでしょう。そして、それは他のライバルたちも同じ。だからこそ、平然とジョイを攻撃することができたのでしょう。

この生活に耐えて技量を上げたにも関わらず、ロシア人ではないからという理由だけで、不当な扱いを受けたジョイ。もはや母国の家族や自身の尊厳までも差し出さざるを得なかったのは、本当に気の毒で同情します。

終盤、アメリカからの取材を受けることになったあたりからの展開がちょっとわかりにくかったのですが、ジョイが最後までステージにこだわり続けた覚悟はひしひしと伝わってきました。それは、おそらく彼女のステージを見守っていた観客も同じで、ジョイに贈られる万感の拍手に熱いものを感じます。やはり実話というのは説得力があります。

できれば、ジョイを厳しく指導したヴォルコワや体めあてではないと言うスポンサーの真意も、もう少しはっきり描いてくれるとよかったです。ちなみに、エンドロールで、ダンスダブルにジョイ・ウーマックの名前があったように思いますが、バレエのすごさが1ミリもわからない自分は、「女優さんなのにバレエができるなんてすごいな」と暢気に観てました。

主演はタリア・ライダーで、しだいに壊れていくようなジョイを好演しています。脇を固めるのは、ダイアン・クルーガー、オレグ・イベンコ、ナターシャ・オルダースレイドら。ナタリア・オシポワも本人役で登場しています。

おじゃる