ウルフマンのレビュー・感想・評価
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ゾンビ?
狼男の物語としては、豪華キャストだった2010年版の「ウルフマン」の方がクオリティが高かったが、期待しないで観たからなのだろうがそれなりに楽しめた。
美しい自然と、人間側からしたら救いようの無い恐怖だが、その対比が出ておりビジュアル面では文句の付け所が無い。古典を現代の物語に置き換えて描いている本作だが、新しい物語が生まれ続け、観る我々も目が肥えた現代においては本作の様な作品は相当地味である。
プロダクトはジェイソン・ブラム率いるブラムハウス、監督はリー・ワネルと、実現前に立ち消えとなり、1作品だけで幕を下ろした"ダークユニバース"で消えかかっていた企画を映像化し、大成功を収めた「透明人間」のコンビである。…流石に2匹目のドジョウは無理だった様であり、日本での公開は無しという部分は前回と同じなものの、世界的な興行収入は雲泥の差である。
今この頃ベタ中のベタな王道展開、誰もが知る"狼男"の需要は少なかったのだろう。「透明人間」がヒットしたのは往年のネタを上手く受け継ぎ、当時のレビューでも書いたが、見えない存在を見える様に描くという凝った演出が冴え渡っており、古典的でも十分にビビる事が出来たのだ。エリザベス・モス演じる主人公の存在感も大きかったのかもしれないが。
それに比べるとキャストも地味、ストーリーも王道、設定もベタ中のベタだった為、これと言った感動や恐怖は無かった様に思える。だが良かった所も勿論あり、ブラムハウス製の為、恐怖演出には信頼と実績が備わった物であり、個人的には冒頭とラストの監視小屋のシーンがリンクしている所は中々好きだった。娘の"心が読める"という冗談っぽい設定はユニバースものとしての名残りなのか、言葉は通じなくとも心で繋がっていたのか、どちらの意味もある様に感じる。
だがどうも狼男のビジュアルが汚らしく、ゾンビにしか見えない点が少々引っかかってしまった。だったらそのまま大きなオオカミになって貰った方がゴリゴリに感情移入出来た気がしてならない。
この古典がツマランのかも。
狼男の小吠え
往年のユニバーサル・モンスターを一挙リブートする大プロジェクト!…になる予定だった“ダーク・ユニバース”。
しかしご存知の通り、その第1弾『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』がいきなりコケちゃって、豪華スターを配していたその後の作品や企画どころか、“ダーク・ユニバース”そのものが中止に。
モンスターたちの復活も絶たれた…かに思えたが、ジェイソン・ブラム製作×リー・ワーネル監督で『透明人間』をリブート。その斬新さで大評判。
これを皮切りに、“ダーク・ユニバース”とは別口でモンスターたちを単体リブートしていくプロジェクトが始動。小規模ながらヴァンパイア3本(『レンフィールド』『ドラキュラ デメテル号最期の航海』『アビゲイル』)が作られた。
また、それらとは全く別の体制で、ロバート・エガースが『ノスフェラトゥ』を、ギレルモ・デル・トロが『フランケンシュタイン』を、新解釈再映画化。
そう、またモンスターたちが密かに熱い!
そして再びジェイソン・ブラムとリー・ワーネルのタッグで、今度は狼男が雄叫びを上げる…!
なので、ちょっと期待してたんだけど…。
だってさ、いきなり開幕で今回の狼男が謎のウィルス感染で…ってネタバレされちゃあ興醒めじゃない?
『透明人間』で透明化スーツとか、『アビゲイル』で誘拐したバレリーナ少女がヴァンパイアだとかを言っちゃってるようなもん。
現代に舞台を置き換えた『狼男』の斬新さを出だしから損なわれちゃって、果たしてこの作品に何を期待すればいいんだろう…?
案の定、その後の展開ものらりくらりでどうもテンポが悪い。
幼い頃、父とオレゴン州の山奥で父と暮らしていたブレイク。その時、何か…と言うか、行方不明者がウィルス感染で変貌した狼男に襲われた過去を持つ。
で、現代にすっ飛んで、妻シャーロットと幼い娘ジンジャーと平穏に暮らしていたが、消息不明だった父の訃報を知り、久々に帰郷。
山奥に入った道中、何か…と言うか狼男に襲われる。
辛くもかつて暮らしていた家に辿り着くも、ブレイクの身体に異変。感染し、ブレイクは徐々に狼男と化していき…。
外には狼男。家の中でも愛する夫/父が狼男に…!
巧くやれば、人里離れた山奥の家で、孤立無援の限定空間ホラーになり得たろうに…。
狼男に変貌していく父が妻娘を襲うんだか襲わないんだか、どっち付かず。いっその事、一気に狂暴になって襲い掛かった方がスリルやテンポがあった筈。その上で、まだ残る人間性の葛藤も描けた筈。
そういう典型設定ではなく、家族のドラマをじっくり描きたかったのか…? なら、ブレイクは娘を愛している。しかしブレイクは幼い頃、威圧的だった父に恐れを抱いていた。その具現化として、消息不明で死んだとされた父親が狼男になって生きていて、ブレイクたちに襲い掛かる。
人間と狼男の狭間で苦しむブレイク、父との対峙、愛する家族を襲ってしまうのか、守れるのか…?
ベタでもこんな展開を予想していた。
結局そんな展開は無く、だらだらクライマックスになってようやくブレイクは妻娘に牙を剥くも、時すでに遅し。スリルもテンポも盛り上がらないまま、元に戻れずブレイクは非業の死を遂げるバッドエンド…。
これ、面白いの…? 裏付けるかのように、全米では興行・批評も不発。日本劇場未公開はナイス判断かも。
グロい描写はやはり『ソウ』タッグ。
CGには頼らない特殊メイクは見事。2010年のリメイク作もアカデミー賞でメイクアップ賞を受賞したし、今回もノミネートは狙えるんじゃないかな…?
キャストも熱演。しかし、妻役の今旬ジュリア・ガーナーは『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』でのシルバーサーファーの方が魅力的だった。
ユニバーサル・モンスターの仲間たち…。各々の形でリブートされ、ヒット作や名作も。
ドラキュラはコッポラ版、フランケンシュタインはデル・トロ版、ミイラは『ハムナプトラ』、透明人間はブラム×ワーネルの前作、半魚人は『シェイプ・オブ・ウォーター』…。
しかし何故か2010年リメイク版の時もそうだったけど、狼男は決定打と言えるリブート作が無い。だって個人的狼男関連の作品でベストは、全く毛色が違う『おおかみこどもの雨と雪』だもん。
狼男は鬼門…?
いずれきっと誰かが、狼男の雄叫びを高らかに上げさせてくれるだろう。
今回は期待のブラム×ワーネルながら…、小吠えだった。
これは無いな、、、
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