劇場公開日 2025年6月13日

「強い絆が教えてくれる世の中の理不尽さ」ラブ・イン・ザ・ビッグシティ おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5強い絆が教えてくれる世の中の理不尽さ

2025年6月18日
iPhoneアプリから投稿

自由奔放な生き方をする女性ジェヒとゲイの男性フンス。
「社会で生きづらい」という共通点を持つ二人は、血の繋がりがある家族や恋人よりも強い絆で結ばれていたように感じる。
自己を犠牲にしてでも相手を救わんとするその姿に、幾度となく胸が熱くなり、涙がこみ上げてしまった。

ジェヒとフンスは、お互いに遠慮なく何でも言い合える関係を築いている。
相棒が傷ついていると感じ取ると、その心の痛みを分かち合おうとする。
この作りのおかげで、若い女性や同性愛者が社会で受ける苦痛が観客にダイレクトに伝わる構成になっていると思った。
自分は女性でも同性愛者でもないが、この作品はそうした人たちが社会で経験する苦しみを伝えることに成功していると感じた。

ジェヒは周囲から尻軽女として見られていたが、この映画に出てくる男性陣は第一印象が抜群に良いため、彼女が普通に一目惚れし、彼氏のことで頭がいっぱいになる様子は、現実世界で恋愛に真剣な女性と何ら変わらないと思った。
ジェヒと付き合う男たちは、最初は好印象だが、徐々に本性が現れてくる。
どの男性もよく聞くタイプの「ダメ男」ばかりで、まさにダメ男の見本市のようだった。

この映画でジェヒが最初に付き合う男とのエピソードで、初めて彼の家に行った際、旅行中の母親がなぜか帰宅したため、ジェヒをベッドの下に隠れさせるが、その結果、母親の前で見せる彼氏の極度のマザコンぶりに、ジェヒがベッドの下で気づくというコミカルな場面があった。
後から考えると、この彼氏はまだ可愛らしい方だと感じる。

ジェヒにショックな出来事があり、酒場でやけ酒を飲む場面。
最初は声をかけてくる見知らぬ男を無視していたが、フンスにどうしても外せない用事があり飲みに来られないと聞き、自暴自棄になってしまう。
男が差し出した酒を一気飲みした結果、意識を失い、目覚めるとホテルのベッドの上に全裸で、隣には先ほどの男がいた。
これで性被害を訴えても、男が「合意の上だった」と主張し、不起訴になることが容易に想像できた。

ゲイの人たちがイベントを開いている最中に、数人の男たちが突然乱入して会場を破壊していく場面。
「ゲイを気持ち悪いと思うのも権利」などと発言しており、ヤフコメなどで目にしたことがあるなと思いつつ、こんな人たちが世の中にいるのだから、フンスがカミングアウトしたがらないのも当然だと感じた。

ジェヒに予期せぬ妊娠が発覚。
それまで強気で自信に満ちた表情しか見せてこなかったジェヒが、この場面では震えながらうずくまり、そばに寄り添うフンスに弱々しい声で「怖い…」とつぶやく姿を見て、巨人の坂本選手みたいな人(子をもうける意思がないにもかかわらず避妊せずに性行為を求める男)は、この場面をどう感じるのだろうかと考えさせられた。

フンスの母親はフンスのことを「病気」だと思っており、悪気なくそう言ってくることにフンスは心を痛める。
日本の政治家の中にも、同性婚反対の理由の一つとして同様の発言をする人がいたような気がするが、医学的根拠がないにもかかわらず、影響力のある人間がそのような発言をすることで、世の中に誤った考えが広まってしまうと考えると憤りを感じた。

後半のフンスの母親に関するショッキングな場面は、結果的に「野苺酒って何やねん!」と思わずにはいられないコメディ的なシーンになっていたが、本当に悲しい結末を迎えていた可能性もあったわけで、カミングアウトの難しさを強く感じた。

結婚式の場面でフンスが何かを披露しようとしており、「いったい何するつもり?」と思って観ていたが、彼は最高の「いい奴」だった。
観ていて涙が止まらなかった。

映画の序盤、大学内でジェヒとフンスはSNSなど見えないところで陰口を叩かれまくる。
しかし、テストの場面では二人のほうが先に解き終えていることから、他の学生よりも学力が高いことが示されていた。
そこから「差別や偏見をする人間は頭が悪いから、そのようなことをするのだ」というメッセージを受け取り、自分もそう思うので激しく同意した。

おきらく
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