ベテラン 凶悪犯罪捜査班 : インタビュー
ファン・ジョンミン、チョン・ヘインと挑んだ“熱血ベテラン刑事の再演” お互いのベストアクトも明かす

痛快アクション「ベテラン」のシリーズ第2弾となる「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」が、4月11日から日本公開を迎えた。
同作では、韓国を代表するヒットメーカーのリュ・スンワン監督(「密輸 1970」「モガディシュ 脱出までの14日間」)が前作に続きメガホンをとり、韓国を代表する名優ファン・ジョンミンが9年の時を経て、熱血ベテラン刑事ソ・ドチョル役で再び主演。「D.P.-脱走兵追跡官-」などでも知られる人気俳優チョン・ヘインが凶悪犯罪捜査班に加わる新人刑事パク・ソヌ役としてシリーズに新風を吹き込んでいる。
ファン・ジョンミン&チョン・ヘインは、日本公開を盛り上げるべく、4月3日に行われたジャパンプレミアに参加。ファン・ジョンミンが、チョン・ヘインに対して「ステージを降りて、客席を一周したら?」と無茶ぶり→チョン・ヘインが降壇し、客席通路を駆け抜けるという“緊急ファンサービス”も大きな話題となっていた。
映画.comでは、ジャパンプレミアを終え、間もなく帰国を控えた2人へインタビューを敢行。撮影秘話や、互いの“ベストアクト”について語ってくれた。(取材・文/映画.com編集部 岡田寛司/撮影/間庭裕基)

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【「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」あらすじ】
法では裁かれない悪人を標的にした連続殺人事件が発生。不条理な司法制度に不満を抱えていた世論は、犯人のことを善と悪を裁く伝説の生き物「ヘチ」と呼び、正義のヒーローとしてもてはやすようになる。熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班、さらにドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌも捜査に加わり、事件は解決に近づくかに見えた。しかし犯人は刑事たちをあざ笑うかのように、次の標的を名指しする予告をインターネット上に公開する。

――本日中に韓国へお戻りになるとお聞きしています。短い滞在期間だったと思いますが、少しでも楽しい時間を過ごすことができましたか?
ファン・ジョンミン:組まれたスケジュールをしっかりとこなしています(笑)。次に日本を訪れる時は、事前に“楽しい時間”を過ごせそうなことを是非教えてください。
――その時のために考えておきます(笑)。4月3日には、ジャパンプレミアに登壇されていました。日本の観客と交流は“大盛り上がり”でしたね。
ファン・ジョンミン:大阪韓国映画祭(2018年)の特集上映時にも来日していますが、今回のように新作を携えての舞台挨拶というのは初めての機会になりました。一言で申し上げると“幸せ”。日本の観客の皆様から新たなエネルギーを得ることができましたし、観客の皆様からは良いリアクションをいただきました。本当に温かい雰囲気の中で“幸せ”を感じていました。

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――チョン・ヘインさんはいかがでしたか?
チョン・ヘイン:ファンミーティングでは来たことがあったのですが、新作を携えて日本に来ることは、非常に感慨深いものがありました。舞台挨拶は韓国でもしましたが、その時とは違うエネルギーをいただいたような気分になりましたし、とても嬉しかったです。
――では「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」の話に入っていきたいのですが、まずは前作のことを……日本でもシリーズ第1弾「ベテラン」は根強い人気を誇っています。ファン・ジョンミンさんのキャリアにおいて「ベテラン」はどのような存在になのでしょうか?
ファン・ジョンミン:俳優という人生を歩んでいる者にとっては、自身の名前でシリーズものが持てることが非常に光栄なこと。しかもそれがテレビ作品ではなく、映画のシリーズだということに大きな意味があるんです。「ベテラン」はそういう面でもとても意味のある作品だと言えるでしょう。

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――チョン・ヘインさんはシリーズ初参加となりますが、第1弾「ベテラン」はいつ頃見て、どのような感想を持ちましたか?また、本作のオファーについてどのような思いを抱きましたか?
チョン・ヘイン:「ベテラン」は劇場で見たのですが、その時のことを、今でも鮮明に覚えています。当時は俳優といっても新人で、俳優としての夢を育んでいるタイミング。こんな映画にいつか出られたらいいなと漠然と思っていましたね。だからこそ「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」のオファーが舞い込んできた時は、本当に嬉しかったんです。でも一方で、非常に愛されている作品でもありますから、自ずとプレッシャーも芽生えました。でもプレッシャーを感じているだけでは何も解決できない。現場では後悔のないように、自分の持っているものを全て出し切ろう――そういう気持ちで挑むことができました。

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――では、脚本を読んだ際の感想をお聞かせください。「ベテラン」から継承されている部分は多々ありますが、よりダークかつヘビーなストーリーとなっています。
ファン・ジョンミン:第1弾「ベテラン」には、物語が持つ固有のトーンがあると思います。ですが「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」は、そのトーンとはまた異なるエネルギーがあると思いました。最初に脚本をいただいた時、その点に少し疑問を感じていたので、監督には反対的な意見を申し上げました。
第1弾は大ヒットしていましたし、大きな支持と評価を受けていました。監督のような芸術家としては、前作を踏襲してしまうことへの恐れとプレッシャーを感じていたのではないでしょうか。
僕は俳優ですから、むしろ築き上げてきたものが既に存在するのであれば、それを再活用していくというのはありなのではないかと思っていました。ですが、監督には“新たな創作”に打ち込んでみたいという思いがあったのでしょう。「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」のストーリーが構築され、関わる人々がそれを徐々に認めるようになったことで完成へと至ったんです。

チョン・ヘイン:「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」の最も大きな魅力は、観客それぞれが“自分の正義”について考えるようになることです。また、このシリーズは「ソ・ドチョル=ベテラン」であり「ベテラン=ソ・ドチョル」なんです。ですから、ドチョル自身が持つ悩み、葛藤が描かれている点も良かったですね。
演じているパク・ソヌについてですが、過去のストーリーにも言及したバージョンもあったんです。ですが、最終的に“過去をすべて取り除いた”バージョンの脚本に落ち着きました。その点も良かったなと思っています。

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――「ベテラン」シリーズの魅力は、アクションだけではなく「しっかりと笑いもとっていく」という点にもあると思います。撮影現場も笑いがあふれていたのでしょうか? 思わず“笑ってしまった”出来事はありましたか?
ファン・ジョンミン:とても寒かったんですよ……とにかく早く終わって、さっさとホテルに帰りたいという気持ちしかなかったくらい(笑)。
チョン・ヘイン:服のサイズは通常よりも大きいものでした。これは何故かいうと、その下に何枚も服を重ねて着ていたから――それほど寒かったんですよね。
――雨の中でのアクションシーンなんてものもありましたが……想像するだけでブルっときますね。
ファン・ジョンミン:雨を降らせる機械があったんですが、あまりにも寒すぎて、水が出る部分が凍ってしまって。溶かしてから撮影、凍ってしまったらまた溶かして……の繰り返しだったので、余計に時間がかかってしまいました。ちなみに屋上を舞台にした雨の中のアクションシーンは、5日間夜通しで撮影していますよ。それほど大変で、大変で……。
チョン・ヘイン:撮影をするときは、制作部の皆さんがお湯を撒いてくれました。ストーブのようなもので暖をとらせていただきましたし、皆さんのおかげで風邪をひかずに撮影を乗り切ることができました。

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――とてもハードな撮影だったようですが、制作報告会見でのチョン・ヘインさんの「今までやってきた作品の中で一番安全だった現場だった」という言葉が印象に残っています。安全とハードさを両立するのは至難の業だとは思いますが、そこはリュ・スンワン監督の“手腕”だと思いました。
チョン・ヘイン:それはもちろん!アクションについては、監督が練り上げた絵コンテを用意していました。ですから、俳優たちが突発的な行動をすることを嫌うんです。アクションは、決められたプレイをしてこそ安全が守られますから。とにかく撮影現場は“安全第一”。危険なシーンも多かったので、アクション監督やスタッフの方々はとても大変だったはずです。
――劇中では非常に複雑なアクションが幾度も見受けられますが、しっかりと動きが決まっていたんですね。
チョン・ヘイン:えぇ、監督は本当にアクションを撮るのが上手な方です。絵コンテを見せながら「こういう風に動けば、カメラにはこんな形で映る」ということを事前に見せてくれることもありました。俳優がスピーディに動いたからといって、カメラに上手く映るわけではないんです。そこを撮影しながら学びました。ちなみに監督は懸垂が上手い“肉体派”でもあります。

――では、せっかくお2人が揃ってるので、お互いの出演シーンについてお聞きしたいです。ファン・ジョンミンさんは「チョン・ヘインさんの“ベストアクト”」、チョン・ヘインさんは「ファン・ジョンミンさんの“ベストアクト”」だと思う部分をあげていただけますか?
チョン・ヘイン:「これだ!」というシーンがひとつあるんです。それは、映画の終盤で描かれる静かなシーン。ドチョルが刑事として、父として家に戻ってきます。奥さんは既に寝ていて、暫くすると息子が起きてきて、彼にラーメンを分け与えるという何気ないやり取り。このシーンが本当に良くて……とても深く心に刻まれているシーンなんです。
ファン・ジョンミン:注目していただきたいのは、ソヌの“目”です。劇中で描かれる彼の性質を理解しながら見てみると、印象がかなり変わるはずです。ソヌが初めて観客の前に姿を現す時、彼はマスクをしていて、目しか見えないような状態です。僕はここで非常に鳥肌が立つような感覚を抱きました。これは1回見ただけではなかなか感じとってもらえないでしょうね。2回、3回と見て頂ければ、ソヌのキャラクター像について濃密に理解していただけるんじゃないかと――あ、だからといって「映画を何度も見てください」と言っているわけではありませんからね(笑)?
――(笑)。
チョン・ヘイン:でも、何度も観てくれたら本当に嬉しいです。