チャーリーとチョコレート工場 : インタビュー
ティム・バートンの映画といえば、忘れてはならないのがダニー・エルフマンによるスコアだ。特に本作では、思わず笑わずにはいられないユーモラスな楽曲が数々登場。エルフマン本人の楽曲解説とインタビューをお届けする。
ダニー・エルフマン インタビュー&楽曲解説
聞き手:小西未来
――「チャーリーとチョコレート工場」は、バートン監督と11度目のコラボレーションになりますね。
今月5日に行われたジャパンプレミアで肩を並べる
バートン監督(左)とダニー・エルフマン
「うん。今回は劇中で歌う歌が撮影前に必要だったから、普段よりも1年前も早く作業を開始したんだ。おまけに、ティムが同時に進めていた『コープス・ブライド』のほうも歌が必要だったら、『チャーリー』のために2曲つくって、そのあと『コープス・ブライド』を1曲、で、また『チャーリー』を1曲って感じで、頭が完全に混乱してしまったよ(笑)」
――もはやティム・バートン映画にあなたの音楽は欠かせませんが、これまでバートン監督からオファーをうけて、躊躇したようなことはなかったのですか?
「実は1度だけ仲違いしたことがあるんだ。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の終わりのころで。当時は、『バットマン・リターンズ』と『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を連続してやっていて、トータルで2年半もの期間を一緒に仕事をしていた。それで、2人とも燃え尽きてしまって、次の作品(『エド・ウッド』)にはぼくは不参加ということになった。それから1年半ほど、お互い会話をすることもなくて。でも、今から振り返ると、いつかああいった衝突というか燃え尽きというか、そういったものが起きるべきだったんだ。ぼくらは2人とも変わり者だから、衝突が起こらないほうがおかしいんだよ。で、いったん激しい衝突を経験して、彼と一緒に仕事ができないことがいかに辛いことなのかを噛みしめてからは、ずっと関係が良好になった。あれは、一種の兄弟げんかだったんだよ」
――では、それ以外に彼と一緒に仕事をすることに抵抗があったことはないのですね。
「ないね。脚本を読んで抵抗があったりとか、そんなことは一度もないよ。あの仲違いは、20年に及ぶつきあいのなかで唯一のケンカで、唯一の危機を乗り越えることができて本当に喜んでいる。ティムはぼくたちの関係を、『まるでヒッチコックとバーナード・ハーマンみたいだ』って言うんだ。あの2人は傑作をいくつも生み出したけれど、ある時点で大げんかして、その後は2度と仕事をしなかった。幸い、ぼくらの場合は、今でもちゃんと交流を続けている。それはやはり、相手がいないとつまらないってことを、お互いが感じているからなんじゃないのかな」
ダニー・エルフマンによる楽曲解説
既に映画をご覧になった方はご存知だろうが、本作にはバートン的なファンタジーワールドを盛り上げる数々の歌が登場する。いずれも笑いとブラックユーモアに溢れるものばかりで、映画を見れば頭から離れないほど印象的。これらの歌を、作曲者本人が解説してくれた(解説はダニー・エルフマンによる作曲順。劇中の登場順とは異なります)。気になる方は今すぐサントラをチェック!
■「Augustus Gloop」
「この曲を作るまでが、一番苦労したよ。ウンパ・ルンパ族がいったいどんな感じの歌を歌うのか、なかなかイメージが掴めなくて。そのときティムが、『ボリウッド製(インド製)ミュージカル劇の音楽をモデルにしたら?』って提案してくれて、ようやく形が見えたんだ。ぼくもティムも、インドのミュージカル映画の大ファンだからね」
■「Veruca Salt」
「『Augustus Gloop』を完成させたあと、他の3曲について2つのアプローチを考えた。同じ曲を使ってアレンジだけを変えるか、または、アレンジは同じにしてメロディだけ変えるっていう2つのパターンを用意していた。でも、ティムが『全曲まったく違った曲にしよう』って言い出した。そりゃ面白い、って興奮したのと同時に、頭を抱えてしまったよ。『Veruca Salt』の場合は、彼女がゴミ溜めに落ちていくときの歌だから、逆に思いっきりハッピーな感じにすることにしたんだ。サイケデリックで、ヒッピー調。ママス&パパスとABBAを足して2で割ったような感じってうか」
■「Mike Teavee」
「『Veruca Salt』を作り終えたときは、もう方向性が完璧に分かっていた。『Mike Teavee』の場合は、ロックだって初めから決めていた。で、80年代風なパンクロックに、クイーンとビーチボーイズとビートルズをミックスさせた。この曲を作るのも、すごく楽しかったな」
■「Violet Beuregarde」
「ティムには、『カントリー風にしようか』って言われたんだけど、それだけはごめんだと思って、70年代の黒人映画風ファンクにしたんだ。『シャフト』のサントラとか、パーラメントとかカメオをミックスしてね」
■「Wonka's Welcome Song」
「一番最後にやったんだけど、これは簡単だったね。どの曲にしても、ティムと方向性を話し合ったら、ぼくが自宅でどんどんレコーディングしていったって感じ。すべての楽器を演奏して、すべてのボーカルをやって。でも、当時はまさか、自分自身の声がそのまま使われることになるなんて夢にも思わなかったよ」