「実写化というリアリティが浮かび上がらせる原作者の天才性」岸辺露伴は動かない 懺悔室 aさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5実写化というリアリティが浮かび上がらせる原作者の天才性

aさん
2025年5月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

実写版『岸辺露伴は動かない』の「懺悔室」を観て、改めて荒木飛呂彦という人物の凄さに打ちのめされました。
“リアル”な映像で描かれることで、荒木作品に潜む奥深さ、そして狂気じみた天才性がより鮮明に浮かび上がってくる――そんな感覚に襲われました。

物語に通底するのは、人間が誰しも抱える普遍的な感情や心理。まさに「人間の性」そのもの。
本作では、次のようなテーマが描かれていたと感じます:
・罪悪感と呪い
・"幸せが続くと悪いことが起こるかも"という漠然とした不安
・毒親との関係性
・物事の二面性/表裏一体性

これらの複雑で重たいテーマが、見事に岸辺露伴というキャラクターの世界観と融合し、非常にユニークかつ鮮烈な物語に昇華されていました。
日常の不安が、非日常の中で逆説的にリアルに感じられる――まさに『岸辺露伴』シリーズならではの魅力です。

前作から一貫している、“本物”に対するこだわりは今回も健在。
舞台となったヴェネツィアの美しさと不気味さの両立。
その異様で幻想的な空気感は、『ジョジョ』的世界観と完璧にマッチしています。

加えて、キャストやスタッフの表現力・再現力にも感嘆しました。
漫画からそのまま飛び出してきたような演技と演出。ファンならニヤニヤせずにはいられない再現度です。

個人的に最も印象的だったのは、ポップコーンに群がる鳩たちのシーン。

鳩は一般的に"平和"や"幸福"の象徴とされていますが、この場面ではまるでハゲタカのような、死神の使いのようにも見えました。幸福を象徴する存在が、一転して恐怖を喚起する――幸福と絶望が表裏一体であることを象徴する名場面だったと思います。

最後に:幸せを恐れず、全力で掴むということ

幸せも絶望も、運命なのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
けれど、それでも私たちは、全てを受け止めて立ち向かっていくべきだと本作は教えてくれたように思います。

「幸せが続くと悪いことが起こるかもしれない」という不安に怯える前に、
“いつが幸せの絶頂かなんて、死ぬ直前までわからない”
だからこそ、全力で幸せになろう!

そんな言葉を、自分の中にそっと刻みました。

実写版の泉京香は心の師です。

それにしても、高橋一生
フランス語に続きイタリア語まで流暢すぎて怖い(素敵)

a
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