「【中国系タイ人のコミュニティーの祖母と孫との世代間ギャップを、中国の伝統行事や財産分与の過程を通じて描きながら、バラバラだった大家族の絆が取り戻される過程を懐かしき郷愁に満ちた感動と共に描いた作品。】」おばあちゃんと僕の約束 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【中国系タイ人のコミュニティーの祖母と孫との世代間ギャップを、中国の伝統行事や財産分与の過程を通じて描きながら、バラバラだった大家族の絆が取り戻される過程を懐かしき郷愁に満ちた感動と共に描いた作品。】
■エム(ピルキン)は、ゲーム実況の配信で稼ごうと大学を中退したが、上手くいかずに無為な日々をお気楽に過ごしている。
従妹のムイが世話を焼いていた祖父から豪邸を譲り受けたのを見て、大腸癌がステージ4まで進んでいる祖母メンジュとの同居を申し出るが、早々から厳しくこき使われる日々を送る。クスクス。
更に、株で儲けた長男は、郊外の瀟洒な邸宅での同居を申し入れ、長女はイキナリ母にスリスリと寄り添ってきたり、博打で借金塗れの二男スイも、メンジュのお金をあてにするのである。何だかなあ・・。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・という内容なのだが、人間関係が全くドロドロとしていないのだな。何だろうな、この不思議な清涼感は。
・メンジュが、エムの思惑を見越しているかの如く、ビシバシと仕事の指示を出すのに対し、エムは墓参りでもゲーム機を放さないし、大丈夫かいな、と思いつつも、物語はほのぼのトーンで進むのである。
・メンジュとエムの関係性は、彼が軽んじていた先祖を敬うメンジュの姿を見ているうちに、徐々に彼の中で、その重みが増して行く様を、ピルキンが飄々と演じているのである。
・メンジュが自分の家の権利書を譲った相手。それは、一番渡してはイケナイ感じがしたスイなのだが、彼はそれで借金を返済して余ったお金をエムに返そうとしたりするのだが、後半に何故、メンジュが相続分与の判断をした理由が明らかになる、過去シーンが重要なのである。
そこでは、彼女が面倒を見て来た親が亡くなった時に、一切面倒を見て来なかった兄が全部相続し、抗議する彼女との縁を切った事が描かれているのである。
・メンジュの病が進み、化学療法も効かなくなった時に、彼女を引き取るエムとエムの母。メンジュが亡くなった時に、エムには何も相続されていないと思ったら、銀行からかかって来た一本の電話。
それは、彼も忘れていた幼かった彼がメンジュに”お金が貯まったら、お婆ちゃんに家を建てて上げるね!”と言って、その言葉を聞いたメンジュがコツコツと積み立てていた銀行預金だったのである。
<そしてラストシーン。
冒頭、清明祭の際に、小さな墓を掃除していたメンジュのシーンが思い出されるのだが、メンジュのお墓(というか、一家のお墓)は立派なものになっていて、そこにはメンジュの家族が揃っているのである。
そう、メンジュはエムのために長年、お金を貯めていて、エムはそのお金で一族の墓を立派なものにしたのである。独り占めすることなしに・・。
今作は、中国系タイ人のコミュニティーの祖母と孫との世代間ギャップを、中国の伝統行事や財産分与の過程を通じて描きながら、バラバラだった大家族の絆が取り戻される過程を懐かしき郷愁に満ちた感動と共に描いた作品なのである。>