劇場公開日 2025年12月5日

ズートピア2 : 映画評論・批評

2025年12月9日更新

2025年12月5日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

さらなる躍動と高揚がいっぱい。名コンビの絆の移り変わりにも注目!

前作から9年が経つのにあの頃と微塵も変わらぬワクワクが満載。多少記憶が曖昧でも、映画が始まるとすぐにお馴染みのキャラと世界観が大手を広げて迎えてくれる。そこは肉食と草食の動物が共存し誰もがあるべき自分を追及できる理想郷。でも平和の裏側には知られざる秘密が横たわり、前作で脚光を浴びたジュディ&ニックは、“一匹の蛇”の出現によって思わぬ難事件の渦中へと放り出されることに――。

新たなストーリーに触れながらこみ上げるのは「なるほど!」という思いだ。確かに我々はズートピアの本質についてほぼ無知に等しい。ここではあらゆる動物が仲良く暮らしているかに見えて、実は爬虫類は全く姿を現さない。中でも住民の間では「蛇はここに生息しないもの」という共通認識があるらしく、誰もが異を唱えぬまま暮らしている。二人の主人公が体当たりで切り込むのはまさにそこだ。

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とりわけジュディは解き明かすべき謎を見つけたらもう一直線。答えが見つかるまで絶対に諦めない。前作同様、偏見や嘘や固定観念をどう克服すべきかをテーマに据えつつ、それらが歴史上いかに刻まれたのかという負のメカニズムすらも描かれる。動物たちがメインとはいえ、この物語はやっぱり私たち人間社会の写し鏡なのだろう。

思えば、前作は暗黒街をさまよう50年代のディテクティブ・ストーリーを大胆にアレンジした世界観を作り上げていたが、本作ではキツネのニックが晴れて警官となったことで二人の“バディ・ムービー”として見所がアップ。さらにはカーチェイス、アクション、絡み合う謎、名作映画のパロディ、シャキーラの主題歌がもたらす祝祭的な雰囲気に至るまで、泉のような趣向が尽きることはない。

一方、今回のジュディ&ニックは衝突することも多いし、別々の場所で奮闘する時間も長い。これまで築き上げた信頼や絆をいかに前進させられるか。その関係性の行方こそ、我々が見守るべきシリーズの心臓部であることに気付かされる。時におかしく、時にしっとり。二人のケミストリーは今回も味わい深くて最高だ。

ちなみに筆者は郊外のシネコンで本作を観た。同じ回には前作公開時にまだ幼かったであろう小中高生もたくさんいて、この物語が新たな世代に受け継がれているのを実感した。普遍的でありながら革新的。何よりも楽しさと躍動がいっぱい。語るべき余地は限りなく残っていると見た。

牛津厚信

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